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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十七話  休戦か和平か
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人も同様だ、不愉快の極み、そんなところか。

「心配は要らぬ、最終的に反乱軍は我々と協力して地球教対策を行う事を優先すると決定した。改革については当分見守る方針のようだ、不明な所が多すぎ現状では判断できない、そういう事だな」
三人が顔を見合わせた。

「見守るですか……、それは戦争になる可能性もあるという事ですか」
念を押すような口調だった。
「改革が不十分、或いは形だけのものだと彼らが判断すればそうなるだろうな、軍務尚書」

リッテンハイム侯が答えると軍務尚書、エーレンベルクが二度三度と頷く。それを見てリッテンハイム侯が笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「もう少し彼らの内情を教えよう。彼らの中には主戦論を唱える人間と非戦論を唱える人間が居るという事だ。主戦論者は革命を唱え非戦論者が地球教対策の優先を唱えた。今回は非戦論者の主張が通った」

「うーむ、非戦論者ですか」
エーレンベルクが唸りながら他の二人に視線を向けた。二人も意外そうな表情をしている。確かに意外だろう、現状では反乱軍が優位なのだ。非戦を考える人間が居ると言うのはちょっと信じられないに違いない。ここからが本番だ。リッテンハイム侯がわしを見た、腹に力を入れた。

「驚いたかな、だがもっと驚く事が有るぞ」
「……」
「トリューニヒト国防委員長とシトレ元帥は非戦論者だ」
「まさか……」
わしの言葉にエーレンベルクが呆然として呟いた。他の二人も眼を見開いてわしを見ている。無理もない、帝国で例えれば帝国軍三長官が非戦論者と言っているに等しい。可笑しかった、彼らの顔も、その皮肉さも可笑しかった。自然と笑っていた。わしだけでは無い、リッテンハイム侯もだ。

「彼ら非戦論者の力は決して弱くは無い、おそらくは他にも賛同者がいると見て良いだろう。そしてその一人がヴァレンシュタインだ」
「!」
三人が声も無くわしを見詰めている。誰かがごくりと喉を鳴らした。

「信じて宜しいのですか、罠という事は有りませんか」
太く低い声でオフレッサーが質してきた。他の二人も頷く。帝国に打撃を与え続けてきたヴァレンシュタインが非戦論者と言うのは俄かには信じがたいのだろう。

「その恐れが無いとは言わない、しかし可能性は低いと見ている。イゼルローンからフェザーンまでのあの男の動きをみると帝国と反乱軍が戦い辛い状況を少しずつ作りだしていると思う」
「我々もそれについては訝しく思っておりましたが……、信じてよろしいのですな?」
オフレッサーが念を押してきた。

「うむ、向こうからは形だけの改革にはするなと警告が来ている。罠ならそのような事は言うまい」
沈黙が落ちた。眼の前の三人に不満そうな表情は無い、ただ何かを考えている。悪い兆候ではない。一つ関門を突破したようだ、問題は次だ
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