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珠瀬鎮守府
木曾ノ章
その1
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「お前が木曾か」
−−−軍艦学校を卒業するより早く、私に赤い手紙が届いた。
「ああ、木曾だ。あんたの名前は?」
−−−手紙なんて読まなくても、することは分かっていた。
「柏木だ。ここで提督をしている」
−−−命を賭して戦う。そして
「じゃあ、あんたが私の提督か。宜しく頼むぞ提督さんよ」
−−−暁の水平線に、勝利を刻む。
「ああ、宜しくな。そして、ようこそ。鎮守府へ」
−−−それが、私の、私たちの使命なのだから。



 海における一番の危険は何か。
 嵐や三角波、海藻や海底の地形諸共であった時代も、かつてあった。だが、今現在、海における一番の危険は『敵』である。それは過去、西洋では巨大な蛸や魚として描かれ、船を海に沈める魔物と恐れられた。この日の本の国でも同様に、妖怪などの類として恐れられていたものである。
 ある時、それまでと違った船の形となる『艦娘』が、世界に登場した。武装を施された彼女たちは、戦において、こと海上戦に於いて右に出るものはいなかった。船は新しい進化の形として、人を重武装化したものになったのだ。彼女たちは種別に分かれ、自身を専門化し、兵力として、戦争でその価値を十二分に発揮することとなる。
 けれど、それは長くは続かなかった。誰しもが知っていても、信じていなかった海の『魔物』達が、彼女たちに襲いかかったからだ。魔物たちは国籍艦種を問わず、ただ彼女たちとその港を襲い、蹂躙した。
 人々と艦娘は、その魔物たちを見て唖然とした。それは艦娘の体をなしていたからである。艦娘と見た目は全く似つかずとも、魔物たちは現代の艦娘と同じ専門性と兵装を持ち、十分な脅威となり得た。
 人は、人と争う場合ではなくなった。海において、魔物たちは常に優位であった。海洋国は挙ってこの魔物たちの撃滅に乗り出すことになる。
 人と『魔物』の戦いが幾年月も経つ内に、優位性は傾いた。魔物たちは数が減り始めたのだ。

 だが、今此の時も魔物たちと艦娘の戦いは、終わっていない。




 柏木と名乗った提督は、私が鎮守府につくと、宿舎へ連れて行った。そうして荷物を置かせると、早速連れ出した。元々荷物はないし、動きやすい服装をしている。困ったことはなかった。
 私の前を歩く提督は、白い軍服を着ていた。まだ若い。齢三十ほどだろうか。この型の軍服を着るのは年寄りという先入観があるが、提督はうまく着こなしていた。
 第一印象は大切だ。初めからお互いに負のイメージを持ったならば、いざ戦闘となった時に足を引っ張り合う。提督が優秀ならば、そんなことは起きない。起こさないために、その艦をドッグにしまっておくからだ。けれど、それだけじゃ終わらなかったりもする。要らなくなった艦は、碌な装備もないままに突撃や、解体をされてしまう。情の厚い、否この場合
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