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月の世界
第三章
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第三章

「どっちだい?」
「妹さんの方だよ」
「というとフラミーニアかい」
「そうなんだ。彼女のことが好きでね、実は」
「ああ、やっぱりそうだったんだ」
 エックリーティコは彼のその言葉を聞いて納得する顔で頷いた。
「君が最近彼女を見る目はそんなふうだったからね」
「気付いていたのかい」
「何となくだけれど」
 一応こう言いはする。
「気付いていたよ」
「そうだったのか」
「そしてだよ」
 エックリーティコはさらに言う。今度はチェッコに対してだ。
「一つがわかればさらにもう一つのことがわかってくるものだけれど」
「はい」
「君はリゼッタさんにだね」
 楽しげに笑って彼に問うのであった。
「彼女に御執心なんだね」
「おわかりですか」
「だから一つのことがわかればもう一つのことがわかってくるんだよ」
 だからだというのである。
「それでね」
「実はその通りでして」
 ばれているとわかってそれで照れ臭そうに笑って答えるチェッコだった。
「私はリゼッタが」
「いいねえ。いい女中だしね、彼女は」
「それでエックリーティコ」
「相談したいことは」
「ああ、それももうわかっているよ」
 言うまでもないということだった。
「それもね。つまりあれだろう?」
「そうなんだ。恋の成就に」
「貴方の御力を」
「こちらとしても願ったり叶ったりだよ」
 微笑んでこう返すエックリーティコだった。
「僕としてもね」
「というと君も」
「そういうことですか」
「僕はクラリーチェがね」
 というのである。彼もまた照れ臭そうに笑って。
「だからできれば君達の力をね」
「そうだったのか。じゃあ三人力を合わせて」
「やりますか」
「実はもう策は動いているんだ」
 このことも話す二人であった。
「既にね」
「そうだったのか。もうか」
「早いですね」
「そこに君達が来てくれたというわけなんだよ」
 このことも話す彼であった。
「そして君達には」
「うん」
「助けてもらいたいと」
「その通り。僕達は一蓮托生だ」
 まさに目的が同じなのだった。恋を成就させたいという。
「だからこそ仕掛けるよ、いいね」
「ブオナフェーデさんに」
「やりますか」
「いいかい?まずは」
 エックリーティコは二人に対して話すのだった。実に楽しげな顔で笑いながら話すのであった。これから実行に移すその計画のことを。
 ブオナフェーデの屋敷。オレンジの屋根と白い壁の家の中は白く華やかで明るい装飾に道実に美しい。二人の娘がその中で浮かない顔をしていた。
 一人は黒い髪を少し伸ばしている。弓なりの眉に細い顔をしており表情は幾分か神経質そうだが大人の雰囲気を醸し出した顔をしている。服は黄色いドレスだ。黒い瞳の光
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