黄巾の章
第6話 「こ、孔明の罠だぁぁぁぁぁぁぁっ!」
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―― 馬超 side 冀州濮陽近郊 ――
「……ん」
あれ?
あたしは……
目が覚めると天幕の中にいた。
「えっ……と?」
痛む頭を押さえつつ、藁の上に敷かれた布団から起き上がろうとして――
ズッキーン!
「うはぁ。いったぁ!」
あばばばばばば! いたいいたいいたい!
背中が、手の届かない部分が猛烈に痛い!
「あつつつつ……くぅ〜。はぁ、いったぁ……」
あたしが痛みに七転八倒していると、天幕に入ってくる人影があった。
「ああ! なにしてるんでしゅか! 身体を起こしちゃダメですよぅ!」
小さな帽子を被った女の子が、あたしを押さえつける。
わかってるよ! 痛みで動けないんだから!
「うぐぐぐ……ご、ごめん。あたし、どうなったんだ……?」
「? 覚えていらっしゃらないんですか?」
少女は、あたしの額に手を当てつつ尋ねてくる。
「う、うん……あの」
「熱がまだありますね。馬から落ちた時に、だいぶ背中を強く打ったようですし……頭の傷もありますから、しばらくは安静が必要です」
「ああ、ありがと……えーと」
おぜうさんはだあれ?
「あ、私は諸葛孔明と申します。この義勇軍で盾二様の臣として従軍しています」
「ああ、ご丁寧にどうも……あたしは馬孟起ってんだ。そっか……落馬したんだっけ」
この錦馬超と言われたあたしが落馬か……情けないなあ。
「漢での初陣が負け戦……ほんとに情けない」
「あまりご自分を責めないほうがいいですよ。気が弱ると身体にも悪影響です」
女の子――孔明はそういうが……あたしは自分が許せない。
母さんである馬騰の後継者と言われながら、その初陣で黄巾党なんて賊に負けたのだ。
それがあの馬鹿華雄のせいだとしても……西涼から連れてきた多くの仲間も失って、うしなっ……て?
「なあ、こ――っつつつつつ!」
「ああ! だから起きちゃだめでしゅってば!」
あーうーあー! くう……痛い。
「っっっっ! くぅ……な、なあ、孔明。あたしの連れ……どうなった?」
「っ! あ……えっと、その……お一人だけは、さっきまで……生きておいででした」
「……! そ、そう、か……」
……そうか。
……くそ、くそ、くそ、くそ、くそ、くそ!
「くっ! ぐぐぐぐ……」
「ああ! そんなに力を込めたら……」
「ぎぐっ! い……い、いたひ……」
「もう! 打ち所が悪くてかなり痛むんですから、そんなに力こめちゃダメです……気持ちは、わかりますけど」
ぐっ……わかってるよ……
けど、あたしのせいだ……あたしが負けたから……
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