暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
二十二 〜語らい〜
[2/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ないのですが」
 ねねの言う通り、この豪華な顔触れでまともな一軍であれば、相当の戦果を挙げられるだろうが……。
「ないものねだりをしても仕方ありますまい。それに、相手は烏合の衆。数の優劣で勝負は決まりませんよ」
「疾風の言う通りです。私達軍師の、腕の見せ所ですし。そして、孔融軍が二万余で向かって西側を。韓馥軍が二万弱、向かって東側に布陣します」
「併せて十万に満たぬが、これで広宗を包囲する事と相成った」
「包囲ですか? しかし、攻城戦は、相手よりも多勢が常ですぞ?」
「ねねの申す通りです。野戦ならば、繰り返しますが引けは取りませぬ。ですが、広宗も城塞都市。力攻めでは、此方の被害も甚大になりましょう」
「せや。けどな、野戦に持ち込むっちゅう事は、相手を引っ張り出さなあかんやろ?」
「今までの、私達の戦い方は、当然奴等にも伝わっているだろうからな。つまりは、だ」
 霞の後を受けて、愛紗が意見を述べる。
「……賊軍は、動かぬ。籠っている限り、仮に官軍が倍になっても、防御側の優位は覆らぬからな」
「迂闊に出てみぃ。無力な庶人相手やったらともかく、ウチら相手に正面から当たればどないな事になるか。いくら賊軍かて、予想ぐらいするやろ」
「だから、まずは包囲を敷く。そして外部との連絡を絶ち、補給もさせない……そうですね、ご主人様?」
「うむ。十三万もの人間がいて、しかも今までは酒も食糧も好き放題にしていた。そんな連中が、急に守勢に回り、節約に務めねばならぬ……持久戦ではあるが、より辛いのは此方ではない」
「ですが、我らとて糧秣は無限にある訳ではありません。期限を区切らねば、朝廷からも督促が参りましょう」
 疾風の懸念も、尤もではある。
「そこを何とかするのが、風達軍師ですからねー」
「そう言う事です。ねねも良き策のため、協力して下さいね」
「承知なのです!」
 うむ、これで良い。
 皆が私に頼る事なく、自らの意見をぶつけ合う。
 議論と言うのは、案外自発的には出来ぬもの。
 私が全てを仕切れば、新撰組のようになりかねない。
 今でもやり方が間違っていた、とは思わぬが、結果として、皆が私の方針に唯々諾々と従うのみ……そんな組織になってしまった。
 当然、私は道を誤らぬよう努めるべきだが、時にはそうも行かぬだろう。
 佐幕の為に尊王の者共を斬れば良い、それのみを考えていた仲間のようにはなって欲しくない。

「お、お待ち下さい!」
「下がれ、下郎!」
 む、何やら外が騒がしいようだが。
 あの声は……夏侯惇?
「如何した?」
 私は席を立ち、天幕から顔を出した。
「はっ! そ、それが」
「いきなりで悪いわね。非礼は詫びるわ」
 やはり、曹操が一緒か。
 夏侯惇一人で来る訳がないからな……夏侯淵と違い、武一辺倒
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ