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売られた花嫁
第二幕その五
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味が広がっていく。そしてそこには玉葱のものもあった。この店のソーセージは中に玉葱も入れているのだ。
 それを食べた後でビールを口にする。ソーセージの旨味とビールの苦味が口の中で混ざり合った。
「問題は皆をどうやって信じさせるかだな」
 彼はここでひとまずフォークを置いた。
「皆僕をマジェンカを売ったと思っているな。恋人を売った卑しい奴だと」
 ソーセージから湯気が出ている。それを見るとまた食べたくなった。
 またフォークを手にとりそれを食べる。そしてまたビールを飲む。飲みながら考える。酒が頭の回転を助けてくれていた。急に頭の中が回りはじめる。
「マジェンカを売ったと思われるのはしゃくだけれど」
 実はそれは彼にとっても本意ではなかったのである。
「それをどうするか、だな。さて」
 ソーセージとビールを味わいながら考える。
「お金と恋なら恋の方がずっと大事に決まっている」
 その信念は変わらない。
「お金なんて幾らでも手に入る。だけれど恋はそうはいかないんだ」
 恋は人によっては決して見つけることができないものである。手に入れられない者すらいる。偶然手に入る場合もあればどうやっても手に入れられない場合もある。恋の神というのは非常に気紛れな存在でありその心は移ろいやすい。イェニークにもそれはわかっていた。

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