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男女美醜の反転した世界にて
反転した世界にて2
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『うわ、ずっるい』
 

 ◇


「では、ホームルームを始めます。日直」
「きりーつ」

 日直の号令に対してパブロフの犬の如く。条件反射で立ち上がって一礼。
 ……あれ、壇上に女の先生が立ってる。
 担任は風邪でも引いたのだろうか? 割とどうでもいいけど。

「えー、今日は、文化祭の出し物について。一限目も使って、今日中に提出してもらいます」

 もうすぐ文化祭か。いつの間にかそんな時期になったんだなぁと、しみじみ思う。
 ちなみに、去年はうちのクラスは喫茶店をやっていたはずだ。 
 準備期間の時、男子の一人がメイド喫茶をと主張していたのを思い出した。
 僕も個人的には大賛成だったのだけど、女子の猛反対を受けて志半ばに頓挫したんだっけ。僕は話し合いには参加せず、傍観していただけだけど。
 
「それじゃ、あとは実行委員長に任せた」
「はーい」

 今回も、前回みたいに白熱するのだろうか。
 前回同様、僕には何の関係もない世界だ。――筆箱とノートを使って簡易枕を作成する。
 どうせ最後に多数決とかになるんだろうし、一人くらい手を挙げてない奴が居たってばれやしない。……というか僕が手を挙げても、先生、多分気づかない。別に悲しくはない。別に。
 近頃の睡眠不足を解消させるために、ここはいっちょ気合い入れて、居眠りを敢行させていただきましょう。
 

 ◇


 ――。む。

「――……」
「――、――!」
「〜〜!、――!!」


 ――おぉ騒々しい。
 気分的には、机に突っ伏して、目を閉じて……、そして開いたような。その程度の認識なのだけど。
 しかし、黒板の上に設置されてる時計を見ると、実に40分以上もの時が経過している。
 それと、仄かにしびれる二の腕と、枕にしていた教科書の上に溜まっている涎が、僕の熟睡具合を如実に語っていた。
 周りを見回す。

「もう! なによ、別にいいじゃないこのケチ!」
「ケチで済むかバカヤロー!」
「そうだそうだ! 男たちにとっては死活問題だ!」
「ふんっ! 誰があんたのコスプレを見たがるのよ。このブサイク!」
「あぁ!? お前だけには言われたくねえよ、このもやし女!」
「あっ、いまあたしのこと、もやし女って言ったな!? お前、覚えてなさいよ! 今度あんたの家の郵便受けで、もやしを栽培してやるからね!」
「なにそれこわい」
  
 おうおう、盛り上がってるなぁ。
 ちょっと、どころかかなり口汚い言葉が教室中を飛び交っている。
 一体なにが、クラスメイト達をここまで白熱させているのか――、僕はさり気なく汚れた教科書をティッシュで拭きながら、正面――黒板に書き出されている出し物の候補を確認。
 して、全てを理解した。


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