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売られた花嫁
第一幕その四
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勿論」
 イェニークはそれに乗ってきた。
「わかって頂けますか」
「しかしもっと大切なものがありますな」
「それは?」
「お金です」
 ケツァルは笑ってそう答えた。
「お金は恋よりも大事だと思いますが」
「いやいや」
 だがイェニークはそれを笑って否定した。
「お金は作ろうと思えば作れるものです」
「はい」
「ですが恋はそうはいかない。恋は作ろうと思っても作れませんからね」
「ほう」
 ケツァルはそれを挑戦状と受け取った。だがそれを顔に出すわけにはいかなかった。
「それを証明して頂きたいですな、いずれ」
「喜んで」
「おいイェニーク」
 ここで仲間の一人が声をかけてきた。彼はその手にギターを持っている。
「踊らないか?俺が演奏するからさ」
「お、いいね」
 応えながらケツァルに顔を向けてきた。
「どうですか、貴方も」
「いや、私はいいです」
 ケツァルは愛想笑いをしてそれを断った。
「今はビールを楽しみたいので。宜しいでしょうか」
「それなら」
 無理強いはしなかった。彼はケツァルから顔を離し席を立った。そして他の仲間達に対して言った。
「踊るか。僕の幸せの前祝いに」
「よし!」
 ギターの演奏がはじまった。そして皆踊りはじめた。この辺りの民族舞踊であった。
 ケツァルはその踊りと音楽を拝見しながらビールを飲んでいた。一人これからのことについて思いを巡らすのであった。

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