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売られた花嫁
第三幕その五
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る。そう思うんです」
「馬鹿な」
「どうやったらそうそう考えられるんだ」
 村人達は口々にそう言う。だがヴァシェクはイェニークを信じたのであった。
「僕の好きな人は」
「君の好きな人は」
「エスメラダ先生です。先生を真剣に愛しています」
「よし」
 イェニークはそれを聞いて会心の笑みを浮かべた。そして村人とケツァルに対して言った。皆あまりのことに目をパチクリとさせていた。
「今の言葉、聞きましたね」
「聞きましたね、って」
「何が起こったんだ。これは一体どういうことなんだ」
 それはマジェンカも同じだった。怒りを忘れて呆然としていた。
「これはどういうことなの!?ヴァシェクがそんな」
「マジェンカ」
 彼は前に出て来た。そしてマジェンカに声をかけてきた。
「何!?」
「あらためて言うよ。ミーハの息子は君を愛していると。この世の何よりもね」
「何よりも。けれどそれは誰なの!?」
 彼女にはもうわけがわからなくなっていた。他の者もである。
「どうなってるんだ!?」
「さあ」
 もう誰にも何が起こっているのかわからない。イェニーク以外には。
「落ち着いてね」
「またその言葉を」
 マジェンカはさらに訳がわからなくなった。
「どうして私にそんなに落ち着けっていうの!?本当にわからないわ」
「君に真実を言う為さ」
「それも」
 彼女にはわからないことばかりであった。他の者も。
「もう一度言う。ミーハの息子は君を愛しているんだ」
「けれどそれは僕じゃない」
「そうさ」
 ヴァシェクに対してそう答える。
「君はマジェンカとは結婚したくはないんだね」
「はい」
「何っ」
 それを聞いて驚いたのはケツァルであった。
「これは一体どういうことなんだ」
「ケツァルさん」
 ヴァシェクが彼に顔を向けてきた。
「何だい」
「僕は村の娘さんと結婚するって言いましたね」
「ああ」
「けれど僕はマジェンカとは結婚するつもりはないんです」
「それはどういうことなんだ!?」
 ケツァルもさらにこんがらがってきた。
「話がわからないのだが」
「僕にわかっておりますよ」
 イェニークだけがその中で冷静だった。
「そのミーハの息子は」
「誰なの?」
 マジェンカが問うた。
「今君の目の前にいる」
「えっ!?」
「けれど僕じゃない」
「そうさ。ヴァシェク、聞いたことはないかい」
「何をですか?」
「君のお父さんは今のお母さんと結婚する前に結婚していたね」
「あ、はい」
 それはヴァシェクも聞いていた。
「そういえばそうでした。お父さんから聞いたことがあります」
「うん。もう亡くなってしまったけれど」
「はい。凄く綺麗な人だったって。お父さんが話していました」
「そのお母さんの
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