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売られた花嫁
第三幕その三
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ないわ」
 狼狽しながらもそう答える。
「だって彼は」
「わしの目と耳が証人だ」
「お父さんの言葉を疑うのかい?」
「そんなことはないけれど」 
 マジェンカの顔が次第に困ったものになってきた。暗い雲が覆いはじめていた。
「けれど」
「否定しきれるか?」
「・・・・・・・・・」
 マジェンカは遂に答えられなくなってしまった。父が嘘をついているとは思えないからだ。
「な、わかったろ」
 クルシナはここで娘に対して言った。
「御前は売られたんだ、あいつに。裏切られたんだ」
「もうあんな男のことは忘れておしまい。それが御前の為なんだよ」
「そうなの」
「そうさ。いいね、マジェンカ」
 ルドミラの声がさらに不安に覆われていく。
「大人しくミーハさんの息子さんと結婚しなさい。少なくとも御前を騙したりはしないから」
「私を騙すなんて」
「もう一度言うぞ」
 クルシナの声が険しくなった。
「私が御前に嘘をついたことがあるか!?」
「・・・・・・いえ」
 頷いた。遂にそれを認めたのであった。
「お父さんが私に嘘をつくなんて。考えられないわ」
「そういうことだ」
「マジェンカ、わかったね?」
「・・・・・・ええ」
 母の言葉にも頷いた。
「よく考えてみる。それで結論を出すわ」
「そうだ、それがいい」
「本当によくお考えよ。人間ってのは心が一番大事なんだから」
「心」
 マジェンカは呟いた。二人は彼女を一人にした。よく考えさせる為であった。
 一人になった。そして考えようとしたができなかった。かわりに涙だけが零れてきた。
「こんな・・・・・・」
 その青い目から大粒の銀の涙が零れる。
「こんなことって・・・・・・」
 信じられなかった。だが嘘ではない。それがわかっているからこそ辛かったのであった。
 泣いていた。悲しかった。これ程悲しかったことはこれまでなかったことであった。
 涙が止まらない。それでも何とか考えられるようになった。しかしそれでも信じられなかったのである。
「嘘よ、イェニークが」
 彼が自分を売る筈がないとまだ思っていたのであった。
「彼から直接話を聞かないと。何もわからないわ」
 だが何処にいるのか。それすらもわからなかった。
 何とかしたい、だができない。そのジレンマが彼女を苦しめていた。
「彼がいなくなるだけでも耐えられないのに。そんなことが信じられる筈もないのに」
 言葉を続ける。
「二人なら何処にいても平気なのに。私は夢を見ているの?恋の薔薇が散ってしまったの?一体何が起こったというの?私を不幸が覆っているの?これはどういうことなの?」
 混乱してきた。それでも涙は零れ続ける。それでもう服が濡れそぼってしまっていた。
 彼女は何処かへ去った。真実を知る
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