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売られた花嫁
第三幕その二
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全て打ったかな」
 しかしまだやるべきことはあった。そして彼は動いた。
「最後はやっぱり彼女を何とかしないとな」
 そう言いながら彼も何処かへ去った。後には誰も残ってはいなかった。次の騒ぎの前置きであるかのように沈黙がそこを支配していた。
 ケツァルに話をしエスメラダにそう言ってもらったヴァシェクはまた一人ぼんやりと考えていた。
「これで僕と先生は結婚できるのかなあ」
 そう思うと嬉しいがやはり不安はあった。
「できたらいいけれど」
 もしできなかったならば、そう思うと不安で仕方ないのである。
 それでも考えずにはいられない。そこへケツァルがやって来た。
「ヴァシェク君、ここにいたか」
「あ、ケツァルさん」
 彼はケツァルに顔を向けた。
「どうしてここに」
「どうしてって君を探していたんだよ」
 彼はそう答えた。
「僕をですか」
「そうさ。まずはエスメラダ先生だけれど」
「はい」
「この村で自分を真剣に愛してくれている人と結婚するそうだ。快く承諾してくれたよ」
「本当ですか!?」
「ああ。そして君のことだけれど」
「はい」
「この村の娘さんと結婚するんだね」
「はい」
 ヴァシェクはそれに頷いた。
「間違いありません、その通りです」
「ふむ、ならいい」
 彼はそれを聞いて納得した。
「何か引っ掛かるが」
「気のせいですよ」
 慌ててそう返す。
「そうかな」
「そ、そうです」
 さらに慌てて言い繕う。
「だから気になさらないで」
「だといいけれどね」
 半信半疑ながらとりあえずは納得することにした。そして話を進めることにした。
「あの娘がこの村の娘であることには変わりないしな」
「ええ」
「じゃあこれにサインをお願いできるかな」
 そして懐から新しい契約書を出した。そこにはヴァシェクがこの村の娘と結婚すると書いてあった。クルシナの娘ではなくなっていた。だがミーハの息子の部分だけは同じであった。
「いいかい」
「はい」
「おお、そこにいたのか」
 しかしここで地味だがパリッとした民族衣装に身を包んだ中年の男女が姿を現わした。見れば男は何処かヴァシェクに似た顔をしていて髪はイェニークのものと同じ色であった。女の方は髪と目の色がヴァシェクと同じであった。
「あ、お父さんお母さん」
 ヴァシェクは二人を見てそう言った。
「どうしてここに?」
「どうしてって探したんだぞ」
 二人はとぼけた様子のヴァシェクに対してそう言葉を返した。
「一体何処に言っていたのか。心配したんだ」
「そうだったの」
 ヴァシェクはそれを聞いて申し訳なさそうな顔になった。
「御免なさい、心配かけたね」
「わかればいいんだけれどな」
「結婚するんだから。もう少ししっかりして欲しいわね」

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