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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
情報屋とストーカーは紙一重
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クソッ!」

 口々に捨て台詞を残し、彼らは一目散に逃げ出した。情報屋をしているだけあって、一様に敏捷値が高い。あれなら、確実に圏内まで逃げ帰れるはずだ。
 そう判断すると、マサキはまだ戸惑ったように佇んでいるアルゴに向き直った。

「逃げるぞ」
「エ、ちょっ……わあア!?」

 マサキは小さく言うと、答えを聞かないままアルゴの手を掴み、走り出す。後ろでアルゴの悲鳴が聞こえた気がするが、気にしない。
 と、二人の前に、一体のリトルネペントが立ちはだかった。何本もあるツルを振り上げ、二人に襲い掛かろうとする。この攻撃を受けた場合、その間に他のネペントたちが襲来して、一気にHPを喰らっていくだろう。それを考えたアルゴの表情が一瞬歪む。
 しかし、マサキは全く動じていなかった。脳が凄まじい速さで回転し、敵の予想攻撃ポイントを割り出す。リトルネペントには当然のことながら筋肉がないため、以前ボス戦で使った“筋肉の収縮具合から攻撃を予測する”パターンは不可能だ。だが、それでも予測する方法は存在する。

 ――AIというのは、突き詰めて言えば、“相手がAという行動をした場合、Bという行動を取る”といった思考回路(マニュアル)の集合体だ。そしてその行動は、人と違って常に最善の選択をする。例えば、相手のaという行動に対して、A,B,C,の三つの選択肢が存在し、その中でBが最善だと仮定する。この場合、人はこの三つの中から自らが取る行動を選択することになる。そのため、もしその人物が初心者だった場合、もしくは、思考が追いつかないほどに切羽詰った状態だった場合は、BではなくAやCを選択する可能性がある。
 しかし、AIは違う。この場合、AIならば例外なくBを選択する。なぜなら、AIが行動選択時に使用するのは思考ではなく、自らのプログラムに組み込まれた行動アルゴリズムだからだ。つまり、この場合においてAIにはプログラムに組み込まれていないがためにAとCという選択肢自体が存在せず、したがって選択する行動はB一択となり、完全な予測が成立するのだ。

 マサキは予測結果を地形のデータと参照し、最善の逃走経路を導出、その道を一気に駆け抜ける。振り下ろされるツルが紙一重の空を切るのを確認すると、そのままネペントの横を通り過ぎ、最高速で安全地帯への道を走り抜けた。
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