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清教徒
第一幕その六
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第一幕その六

「だからこそ私も・・・・・・。それはおわかりですね」
「陛下」
 アルトゥーロは跪いてエンリケッタに対して言った。
「ここに私がいます。私がいる限りそのようなことはさせません」
「クロムウェルを怖れないのですか?」
「何故彼を怖れる必要があるのです」
 毅然として顔を上げた。
「私が怖れるのはただ一つ」
 彼は言った。
「陛下、貴女の御命が消えることです。他には何もありません」
「宜しいのですか?」
「はい」
 彼は答えた。
「その為にここへ参ったのですから」
「しかし」
 エンリケッタは戸惑っていた。
「侯爵、貴方は婚礼の為にここへ来られているのでしょう」
「はい。ですが陛下の為ならばそれも喜んで捨てましょう」
「なりません」
「何故ですか」
「貴方は貴方の幸せを考えなければならないからです」
「臣下の幸せは陛下の御命が保たれることです」
「なりません」
 エンリケッタはまた言った。
「貴方は幸せにならなければならないのです。私はもう覚悟はできていますから」
「陛下」
 アルトゥーロは強い声を発した。
「是非とも私の言葉を聞き入れて下さい」
「しかし」
「それこそが私の望みなのですから」
 エンリケッタは返答に窮していた。そこにジョルジョとエルヴィーラがやって来た。
「いかん」
 アルトゥーロはそれを見て急いで立ち上がった。そして二人に顔を向けた。
「どうしてここに」
「従者に呼ばれまして」
「従者に」
「はい」
 ジョルジョは答えた。
「侯爵が用を済ませられたとかで。そうですな」
「ええ、まあ」
 何かの手違いであるようだ。だがアルトゥーロはここはそうであると言うことにした。
「少し手間取りましたが」
「そうでしたか。しかし終わって何よりでしたな」
「はい」
「侯爵」
 エルヴィーラはアルトゥーロに声をかけてきた。
「何でしょうか」
「もうすぐ礼拝堂に行かなければなりませんが」
「ああ、そうでしたね」
 アルトゥーロはそれに対して頷いた。
「もうそんな時間ですか」
「はい」
 エルヴィーラは頷いた。
「一緒にいきましょう」
「そうですね。まずはヴェールを」
「こちらに」
 それはジョルジョが持って来ていた。アルトゥーロにそれを手渡す。
「どうも」
 彼は頭を垂れてそれを受け取る。そしてそれをエルヴィーラの頭にかけた。純白の天使の衣の様なヴェールであった。
「何という美しさか」
 ジョルジョはヴェールを被ったエルヴィーラの姿を見て感嘆の言葉を漏らした。
「私はこの日を見る為に今まで生きてきたのだ」
「叔父様」
「エルヴィーラよ」
 彼は姪に声をかけてきた。
「幸せになるようにな。よいな」
「はい」
 
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