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清教徒
第一幕その三
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ここでこう言った。
「私は自分の気の済むようにしただけなのだから」
 ここには他にも複雑な問題が色々とあったであろうことはエルヴィーラにもわかっていた。貴族の婚礼とは政治的な意味合いが強い場合が多い。エルヴィーラの家もアルトゥーロの家も権門の家であった。家同士の結び付きを強める為でもあるのは彼女にもわかっていた。おそらくこれはクロムウェルの考えであろうということは容易に予想がついた。それにより王党派を懐柔する為である。自らに反対する者には一切妥協も容赦もないクロムウェルだがそれでもそうした政治的な感覚は忘れてはいなかったのである。それでも嬉しいことには変わりがなかった。
「父はそれを認めて下さったのですね」
「うむ」
 ジョルジョは頷いた。
「そなたに幸福が訪れるようにと決断してくれたのだ」
「何ということ」
「人は何によって幸福となるか」
 ここでジョルジョは言った。
「それは愛情によってだ。エルヴィーラよ」
「はい」
「幸せになるようにな」
「わかりました」
 彼女はそれに応えて頭を垂れた。喜びで今にも涙が零れそうであった。そこへ城の彼方から角笛の音が聴こえてきた。二人はそれに顔を向けた。

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