第一幕その一
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「それでは今日のこの日を共に祝おう。よいな」
「はい」
子供達はそれに頷いた。そして庭から一人また一人と去って行った。ブルームはそれを見届けながら兵士に対して言った。
「そなたも今は持ち場に戻るがいい。よいな」
「はい」
兵士はそれを受けて敬礼してその場を離れた。そして庭にはブルーム一人となった。
彼は暫くその場にたたずんでいた。そして花を見ていた。
「美しい」
彼は一言そう呟いた。
「この花達こそあの方に相応しい。だがどれだけの花があろうともあの方御一人にすら適うことはできないのだ」
そう一人呟いていると庭にもう一人姿を現わした。蜂蜜色の髪と顎鬚を生やした若い男である。
やはり彼も鎧を着ていた。だがそれはブルームのものよりさらに立派である。そしてマントを羽織っている。それを見るとそれなりの身分にある男であることがわかる。顔も精悍で風格が漂っているが何処か陰がありそしてその表情は暗いものであった。
「ふう」
彼は溜息をついた。それから庭を見渡した。
「花で飾られているのか」
「はい」
ブルームはそれに応えた。
「先程城の子供達が飾ったものであります」
「そうか、子供達には褒美が必要だな」
「ええ。ところでどうかされたのですか」
ブルームは彼を心配するような声をかけた。
「普段のリッカルド様とは思えませんが」
「そうか」
その男リッカルドはそれを聞いて寂しい笑みを浮かべた。
「ブルーム殿」
「はい」
「今の私には何があるかな」
「それはまたご冗談を」
ブルームはそれを聞いて笑った。
「栄光と神が。リッカルド様にはその二つこそが相応しい」
「その二つだな」
「はい」
「ではそこに愛はないのですな」
「いや、これは失敬」
ブルームはそれを聞いて慌てて言葉を引っ込めた。
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