暁 〜小説投稿サイト〜
東方調酒録
第四夜 八雲紫は底が知れない
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 博霊神社から香霖堂に向かう道の途中に新しい建物が一つ出来ていた。レンガの壁は汚れ一つなく、木製の扉は傷一つなかった。無精ひげを蓄えた店主の月見里 悠はもらい物の八目うなぎと書かれた提灯に明かりをつけた。木製の扉についたバッカスと書かれた小さなプレートが提灯によって照らし出され、悠はそれを少し眺めた後、扉を開け中に入った。
 
 バーの中では、すでに開店を手伝ってくれたモノ達が集まっていた。カウンター席に座っていた魔理沙が悠が戻ってきたのを見つけて、
「どこ行ってたんだ?」
と尋ねた。
「外がずいぶん暗くなってきたから、明かりをつけたんだ。 ミスティアさんからもらったお古ですけど」
悠が答えながら、店内の蝋燭に火をつけ始めた。
「やっぱりライトがほしいな……」
「それなら、私達にお任せください!」
河童のにとりが胸を叩いた。悠はにとりにライトと電気の簡単な説明をした。後日にまた詳しく聞かれたのだが、悠程度の素人知識で発電設備が作られるとはこの時は思っていなかった。
「そのライトがあると何かいいことあるのか?」
魔理沙の横に座っていた霊夢が聞いた。
「蝋燭みたいに変える必要もないし、?燭よりずっと明るいですよ」
「ふ〜ん……」
霊夢にとっては興味のないものであるみたいで、魔理沙と話を始めた。
 カウンター席には霊夢と魔理沙の他に妖精のチルノと大ちゃんがフローズン・バナナ・ダイキリーのような軽くて甘いカクテルを飲みながら騒いでいた。主に騒いでいたのはチルノだけで大ちゃんはにこにこと見守っている。その二人の近くにいながら、チルノの騒ぎにも気を留めず静かに飲んでいるのは、緑色の髪と赤い瞳をした風見幽香であった。後ろのテーブル席では人間が机を囲んで飲んでいる。その中には河童や天狗の姿も見受けられた。この時間に飲んでいる人間であるから、それなりの力を持った者達である。そんな者達が肩身の狭さを感じているのは、カウンター席いる風見幽香ともう一人、悠の前に座っている八雲紫のせいであった。この二人を前にしては、どんな妖怪、人間、たとえ霊夢でも相手にはならない。八雲紫は金髪のロングヘアーで、毛先をいくつか束にしてリボンで結んでいた。服装は紫色のフリルのついたドレスにリボンが巻いてある帽子をかぶっている。かもしだされる雰囲気は底の知れないものを感じるが、見た目は少女のような美しさがある。
「私に合うカクテルを一つ」
こんな頼み方をするのよね?と聞きながら紫が注文をした。紫は偶に間違った外の知識を披露する。
「紫さんにはどんなカクテルでも合いますよ」
「面白いことを言うわね」
紫は妖しく笑った。蝋燭によって照らされたその顔に悠は背筋に這うものを感じた。
「えっと、その中で紫さんのイメージだとあれだな」
悠は思いついたようで、後ろの棚からドラ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ