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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一〜四章
二章 やんちゃ王子の観光
2-01やんちゃ王子

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「おお、アリーナか。ばあやから聞いたのだが、力試(ちからだめ)しの旅に出たいと申しているとか……。」
「なんだ親父、もう聞いたのか。ブライが黙っているわけはないが、早いな」
「父上と呼ばぬか!では、誠なのだな。ならぬっ。ならぬぞ。お前はこのサントハイムの王子。いずれは、国王となる身なのだぞ。」
「わかってますよ父上。だからこそ、外の世界を見て回ることも必要でしょう」
「帝王学もまともに修めておらぬ分際で、わかったようなことを申すな。学問を十分に修めた後に、供を付け、見聞を広めるならば良い。怪物どもが住む外の世界で、命を落としてはなんとする。護衛も無く力試(ちからだめ)しに出るなど、このわしが許さん!」
「俺……僕より弱い護衛などいりませんよ」
「そのような話では無い!ともかく、この城から外に出てはならぬぞっ!」
「はいはい、わかりましたよ父上。」
「うむ。では、下がって良い……。」


「まあ、出るんだけどな」

 父王の説教から解放された王子、アリーナは、呟いて城内を歩きだす。

 母親譲りの赤味の強い金髪は、高貴な者の常とは違い、短く切られ無造作に整えられている。
 王子として最低限の面目が立つ程度の――本人の希望と周囲の思惑がせめぎ合った結果の産物の――動き易く上等な衣服を(まと)い、暢気(のんき)に歩き回る。

 まずは油断を誘うため。
 外に出たがる()()りなど、見せないように。


「王子!」
「ああ、うるさいのが」

 元宮廷魔術師で、現在は顧問として国王に助言する立場であり、王子の教育係でもあるブライが、遠くからアリーナの姿を認め、年齢に見合わぬ素早い動きで近寄って来た。

 うんざりした気分を飲み込んで、にこやかに応じる。

「やあ、ブライ。今日も元気そうだな」
「何が元気なものですか。王子。少しはおとなしくして、学問に励んで頂かないと。お亡くなりになったお妃様も、とても聡明な方でしたのに。」

 やはり今日も元気だ。

 親に似ないことを怒られても困るが、言い返すと倍になって返ってくる。
 それに、今は油断させたい。
 神妙な顔で、聞いている振りをする。

「王子の教育係として、このばあやは、王様に合わせる顔がありませぬぞ。」

 顔を合わせて告げ口したくせに。

 とは言わず、引き続き神妙な顔をする。

「今日は、嫌におとなしいですな。反省されたなら、結構なことです。学問の時間を、さぼったりなさいませんように!」

 言うだけ言って、ブライは去って行った。

「ああ、今日も長かった」
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