ナツキ・エンドーと白い女神
ナツキ・シライと写真
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─翌朝─
俺たちは朝一番で部屋に籠りパソコンを開いていた。
「ま、とりあえず本題といくか」
「おぉ、聞かせてくれ。遠藤菜月は何者だ?」
そう聞くと、グランシェは神妙そうな面持ちで言う。
「目撃情報が異常に多いんだ」
「そりゃあ有名人だからな?」
「まぁ、これを見てくれればその異常さがわかるさ」
グランシェはノートパソコンを開いて寄越した。というかいつの間にこんなモノ買ったんだコイツ。
そこには遠藤菜月の写真が30枚程、添付されていた。
「随分と少なくないか? ……ん? 白黒写真!? いつの時代のモンだこりゃ?」
彼女の目撃写真やら何やらが集まったサイトでは、あろうことか素で白黒やセピア色の写真もあったのだ。これでは時代感がバラバラすぎる。
「ほら、コメントを見てみろ。この古い写真はベルリンの壁崩壊より前に取り壊されたドイツの名家、ヴァロモディア家の別荘の前で撮ってやがる」
ヴァロモディア家と言えばドイツの巨大な森林貴族だ。ベルリンの壁崩壊の少し前から勢力を弱め、東西ドイツの交流をきっかけに姿を消したという貴族の一家。
どういったものか、詳しくは知らないが恐らく東西ドイツの交易に関する仕事で利潤を得ていたのだろう。東西ドイツが仲良くなってしまえばわざわざ交易なんてするまでもなくなるので、ヴァロディモア家はその勢力を失ったのだろう。
そんな事例もある事だし、俺は仲良くすればそれで良いという安直な世間のモノの見方が好きではないのだ。表向き笑顔でニコニコと手を握り合う身なりのいい人間たちの足元には、常にその何倍もの問題を抱えた人間たちが苦しんでいる。
……そんなイメージが浮かんできて少し気分が悪くなった。が、今はそんな話は関係ない。
「これと一緒に写ってるって……遠藤菜月は一体いくつだ?」
「そう、不思議だろう?俺が会った時もこの写真の時と同じ若々しさだ。ナツキ・エンドーは妖怪かもしれないぜ?」
何が妖怪だよ。ただ、確かにおかしい。
色々な写真を見比べるが全て時代はバラバラだし、親兄弟でもこんなに似てる事はめったにないだろう。更に他人の空似にしちゃあ数も多い。しかも時代や場所がバラバラ過ぎる。
「遠藤菜月、コイツは一体誰なんだ……」
その時、新しい写真がアップされる。その写真のタイトルは実にシンプルなものだった。
『祖母の友人』
写真には2人の若々しい女性。一人はヨーロッパの人間だろう。ただもう一方の女性は、セピア色のそれでもわかる黒々とした髪に、一重の奥の黒い瞳。
上品さと可愛らしさを絶妙なバランスで体中に取り込んだかの様なアジア人女性は、明らかに遠藤菜月だった。
コメント欄には掲載者のメモがあった。
『
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