暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
SAO編
episode7 笑顔と希望
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 再び取り出すそれは、……俺ですら見たことのない、虹色に輝く、途方も無く美しい、結晶。

 それを取り出すと同時に、死神はゆっくり、ゆっくりとポリゴン片へとその体を変じていく。登場と逆回しのような…或いは、破砕音を抜いたプレイヤーの死亡エフェクトのような、ポリゴンのゆっくりとした拡散。

 最後に残ったその顔には、NPCとは思えない優しい笑みを浮かべながら。

 「……ああ…」

 残されたのは、水際の位置、俺の胸ほどの高さに浮かぶ、一つの結晶のみ。

 精根尽き果てた俺が、もう一度全力を振り絞って、立ち上がる。
 全力を出せば一秒の半分の半分も掛からない距離が、途方も無く長く感じる。

 (…あれは…)

 去年のクリスマスの、《回魂の聖晶石》のことが、脳裏をよぎる。キリトが手に入れ、クラインがその存在を皆に知らしめて小さくない反響を呼んだアイテム。そして、死者が生き返らないことの証明ともいえたアイテム。

 (やっぱ、ダメか……)

 ずっしりとのしかかる落胆、そして徒労感。だが、これも貴重品だ。一応、貰っておこう。エギルの店で売ってやれば、あいつが上手く使ってくれるだろう。

 そんなことを思いながら、俺が手に取ったそれは。

 《回魂の聖晶石》ではなかった。

 ポップして表示された名前は、似て非なるもの…《追憶の聖晶石》。

 浮かび上がる説明文。
 その最後に存在する、「ロード」の文字。


 瞬間、まるで急に世界が俺だけになったような錯覚が体を包んだ。

 いままで感じたどんな感覚とも感情とも言えない心で、無意識にその「ロード」をクリックする。七色の光を発して、輝き出す《追憶の聖晶石》。その光が、徐々に、徐々に意志を持つように集まっていき、虚空に絵を描いていく。

 そこに浮かび上がったのは、十枚のスクリーンショット。
 その写真の中央にあったのは。

 ……俺が求め続けた、最愛の人の笑顔だった。



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