第6話 追及
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「何処へいく、目黒!」
「空港だ!」
「空港?」
「そうだ、奴の身柄を確保する!」
牧石は、眼鏡が落ちないように右手で支えながら疾風のように駆け抜ける目黒に、ついていく。
目黒は校舎を飛び出すと、校門の前で止まっていたタクシーに乗り込んだ。
目黒があらかじめ、携帯で呼び寄せたのであろう。
「奴って誰だ?」
牧石は、目黒に続いて乗り込むと、目黒に質問した。
「お前も知っている奴だ。
お前の未来を奪った男だ」
目黒の言葉に牧石は、驚愕の表情を体全体であらわす。
「し、知っているのか?」
牧石は真剣な表情で、目黒を見つめる。
牧石は誰にも自分の過去は伝えていない。
先ほどの目黒の言葉から考えると、瑞穂一樹がこちらの世界に現れたのだと、牧石は考えた。
前の世界で、牧石を絶望に陥れ、この世界へ転送させる原因を作った男。
牧石にとっては、「一度殴る予定の相手リスト」の一番上に記載されており、前の世界に戻らなければならない理由の一つでもある。
どういう方法でこの世界に現れたのかはわからないが、元の世界に戻る手間が省けたと、牧石は、残酷な笑みを浮かべる。
ふつうに考えれば、目黒がどうして、瑞穂の情報を知っているのかという疑問が浮かぶはずなのだが、興奮している牧石には考えることができなかった。
仮に誰かが牧石に、その事実を追求したとしても、牧石は、「瑞穂を殴ってから、聞き出す」と答えていただろう。
目黒は牧石が善良そうな学生から、復讐鬼に変貌したことに驚いていた。
本来であれば、目黒は牧石に事件の経過を伝える予定ではあったが、牧石をこれ以上怒らせて暴力を振るわれてはいけないと考えて、話しかけることはしなかった。
「これで、サイキックシティともお別れか」
羽来は、空港のロビーに到着すると、名残惜しそうにつぶやいた。
羽来の海外逃亡は、予定よりも3日早くなった。
原因は、目黒修司という生徒の行動にあった。
目黒は、滝山マリヤの転入騒ぎに介入すると同時に、生徒会や教師から巧みに、羽来の情報収集を行っていた。
そして、くじイベントの総合プロデューサーという訳のわからない役職をフルに活用して、羽来の行動を逐次把握していったうえで、イベントを利用して、詐欺被害防止の啓発活動を行っていた。
羽来は、警察の動きがないことを理由に、目黒の行動を無視してたが、目黒が牧石と交友関係にあることとを知ると、予定を早めて国外に脱出することにした。
幸い、活動資金の移動作業は終わっていたので、最低限の手荷物があれば、逃亡先の生活に困ることもない。
目黒は、皮肉にも本日のイベントに追われているはずだ。
羽来は余裕を持って、受付の方に進もうとしていた。
「待て、羽来!」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ