第5話 予感
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「まだまだ、正答率は低いが、感じを掴んだぞ」
牧石は、自室のコンピューターの前でトレーニングを行っていた。
卒業試験までは殺風景だった部屋も、最近では少しは生活感が現れてきた。
テーブルの上には、いろいろなものがおいてある。
牧石が入手した教科書や参考書。
目黒が用意してくれたテストの過去問集。
迫川が用意してくれたマンガ、もとい授業のノート。
そして、福西が用意した「安産」のお守り。
牧石が超能力の練習に取り組んでいるのは、決して勉強に飽きたからではない。
もちろん、多少の息抜きという意味合いは否定できないが、牧石自身の超能力に変化があったためである。
時間は一週間ほど前にさかのぼる。
「正答率が落ちている?」
「ええ、そうですね」
磯嶋と牧石が試験の結果についてやりとりをしていた。
牧石が卒業試験合格後、最初の能力テストをコンピュータールームで受けていた。
卒業試験までのように、最優先の権利が与えられているわけではないが、二人目の満点合格者ということで、牧石の検査をコンピュータールームで実施することに誰も異論を挟む人間はいなかった。
唯一文句を言いそうな天野は、現在休暇取得中である。
「やり方は、卒業試験の時と一緒よね?」
「ええ、そうでなければ9割という成績は出せませんから」
「たしかに、依然として高い成績率だけど、どうして落ちているのかしら?」
磯嶋はディスプレイに映し出される結果を
真剣に凝視しながら返事をする。
「マインドレベルを見る限り、前回より多少良くなっているし。
本当に牧石君は最高の被験者よ」
「……。
あまりすてきな言葉には聞こえませんね」
「そのおかげで、ただで三食昼寝は抜きの生活ができるのだから感謝したら?」
「ん?そ、そうですね」
牧石は、磯嶋の言葉にうなずいた。
「それにしても、磯嶋室長」
牧石は、磯嶋の胸についているプレートを確認しながら質問する。
磯嶋は、指導していた牧石が卒業試験を満点で合格したことにより主任研究員から室長に昇任していた。
室長に昇任して、給与が上がったり、専用の研究室を与えられたりしたのだが、それほど磯嶋はあまり喜んでいなかった。
もともと、この研究所の職員の給料水準が高いので、あまりお金をかけない磯嶋にとっては関係のないことだった。
せいぜい、広島の企業が製作した、燃費のあまり良くない車(とはいっても、技術革新により34km/Lにまで改善されている)の維持費と好きな野球球団のグッズを集めるくらいしか使い道はなかった。
また、研究室については、もともと分室として磯嶋に与えられており、昇任にともない第4研究室という正式名称が与えられたにすぎない。
「そんな、よそ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ