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魔術QBしろう☆マギカ〜異界の極東でなんでさを叫んだつるぎ〜
第2話 これだけは伝えておこうかな
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 風景が不気味に歪んでいる。ありえざる光景が、周囲に満ちている。
 幾つもの通路や階段が、エッシャーの騙し絵の如く三次元の法則を無視して配置されていた。壁という壁には、抽象画の様な模様が毒々しく描かれていた。中空には、無数の意味不明な記号が浮かんでいた。

 ここは魔女の結界。絶望をもたらし、呪いをまき散らす怪物、魔女が隠れ潜む場所。魔女の分身、使い魔が無数にひしめき合い、人間をおびき寄せて餌食(えじき)とする(わざわい)の巣。
 その最奥に、赤い外套を羽織ったインキュベーターが立っていた。手、もとい耳毛に握るのは黒塗りの洋弓。紅い瞳が見据える先にいるのは、この結界の主たる存在。

 その姿は、あえて言うならばカマキリに似たシルエットをしていた。ただし、頭に当たる部位は羅針盤の様な形になっており、手に当たる部分は巨大な矢印の形をした刃。10メートルはあろうかという胴体は古びた木彫り細工の様で、黒くて針金の様に細い足が何十対も生えている。
 およそ既存の生物とは全く異なる、無機質な姿。それにもかかわらず、それは凄まじい悪意を放っている。

 それこそが魔女と呼ばれる存在。祈りと希望を見失った、魔法少女の成れの果て。人間であった頃の面影を全く残さないその怪異を、白い獣は鷹さながらに鋭い(まなこ)で捉えている。

 先に動いたのは、魔女の方だった。矢印型の剣になっている右腕が振りかぶられ、インキュベーターへと一刀が放たれる。金属的な輝きに反して鞭の様にしなやかな動きを見せるその刃は、その刀身を伸ばしながら真っ直ぐ獲物へと迫っていく。
 一方、狙われる側はその太刀筋を静かに見つめていた。そして、魔女の兇刃がインキュベーターを捕らえんとした、その刹那、インキュベーターはその身を(ひるがえ)す。それだけの動きでインキュベーターは魔女の右腕を逃れ、獲物を見失った刃は床に深々と突き刺さる。よけられたことを認めた魔女は、新たに左腕で斬り掛かった。それを赤い外套のインキュベーターは、耳毛で後ろにとんぼをきって回避する。2度も攻撃をかわされ、魔女はしゃにむに刃の腕を放つが、とんぼ返りを続けるインキュベーターを捕らえられない。

 何度目かかわしたところで、いつの間にかインキュベーターの右前足に弓が、尾には武骨な剣が握られていた。とんぼ返りの途中、耳毛を地に着けて体を上下反転させた格好で、インキュベーターは弓に矢を番えて放つ。しかし、その一矢は魔女をそれ、その足元に突き刺さった。それを気にした風もなく、鷹の眼のインキュベーターは間合いを取りながら弓を引き続け、何処から出しているのか剣の矢を飛ばし続ける。文字通りに矢継ぎ早の勢いで射られる矢は、その何れもが魔女ではなく見当違いの場所に刺さり続けた。

 その有り様に魔女は何かを思っているの
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