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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第九話「魔精霊は顎」
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地面に叩きつけた。半ば地面に埋まった魔精霊に長剣の切っ先を向ける。


 弦月飛脚で急降下した俺は魔精霊の顎の中心を砕いて、剣を突き刺す。


「消え失せろ、顎」


 膨大な神威を注ぐと魔精霊は膨張し、粉々に四散した。





   †                    †                    †





 降り始めた雨がクレアの背中を濡らしていた。俯いた顔は見えず、水滴が顎を伝い地面に落ちていく。それは雨か、涙か――、


「クレア」


「……あたしが、弱かったから」


 話し掛けると、ポツリと呟いた。


「あたしが弱いから、スカーレットを守れなかった……あたしが弱いから――」


 ――姉様を止めることが出来なかった。


「もっと、力があれば……もっと、もっと、あたしに力があれば、こんな……」


 虚ろな表情で力があればと繰り返すエリス。その徒ならぬ気配に手を伸ばそうとして、フッと視界が暗点した。


 しまった、神威の過剰消費か……!


 ふらっと、身体が傾き、意識が遠のく。


 意識を失うその時まで、クレアの顔が頭から離れなかった。


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