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カルメン
第二幕その三
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第二幕その三

「けれど愛されるのは当分考えないことね」
「成程ね」
 エスカミーリョは今の一言でわかった。
「そういうことだな」
「そういうこと。またね」
「ああ、わかった」
「セニョール」
 ここで将校達がまたエスカミーリョに声をかける。
「これからお芝居でもどうですかな」
「そうですな」
 エスカミーリョも笑顔でそれに応える。
「では御言葉に甘えて」
「それでは皆さんも」
「是非共」
「トレアドール、俺達と一緒に」
 彼等は上機嫌で店を後にする。後にはカルメン達だけが残った。
「さて、と」
 カルメンが席を立って仲間達を見回してから言う。
「今度の話だけれど」
「ああ、それならな」
 ダンカイロも席を立つ。そうして店の中央に来て話すのだった。
「いい話がある」
「どんな話かしら」
 カルメンがそのダンカイロに問うた。立ったまま。
「イギリスの船が来るんだ」
「イギリスの!?」
「ああ、その船の中のを少しちょろまかしてだ」
 ダンカイロは笑いながら仲間達に説明を続ける。
「後で高く売るんだ。お宝をな」
「悪くないわね」
「そうね」
 それを聞いてフラスキータとメルセデスがそれぞれ言う。
「皆でやるぞ。特に」
「あたし達ね」
「そうだ」
 声をあげたカルメンに対して応えるのだった。
「御前等がこの話の鍵だ」
「どういうことかしら、それって」
 カルメンはその理由をダンカイロに尋ねた。
「よかったら教えてくれないかしら」
「はっきり言えばたらし込むのさ」
 ダンカイロは笑ってカルメンに答える。
「その船に乗っている船長をな。色仕掛けで」
「その間にってことね」
「ああ。詐欺にしろ騙りにしろ盗みにしろだ」
 そのうえでの言葉であった。
「そうした仕事は女の方がいい。色仕掛けで誤魔化せるからな」
「そうしてたぶらかしている間に」
「船長には強い酒を飲ませればいい」
 ダンカイロはこうも述べる。
「それだけでいいからな」
「じゃあいつも通りね。楽だわ」
 カルメンにとっても他の三人にとっても慣れた仕事である。だから笑って言葉を返すことができたのだ。
「それじゃあ頼めるな」
「ええ、いつも通りね」
「そういうことなら」
「喜んで」
 三人はそれに乗った。これで話は決まりだった。
「よし、それじゃあ」
 レメンダートがここで仲間達に対して言う。
「すぐに行くか、港までな」
「ああ」
 セビーリアは港町である。川辺にありそこに港を持っている。欧州ではよくある川辺の港町なのだ。それがこの町を発展させてきたのである。
 彼等はその港に行こうとする。だがここでカルメンが言う。
「待って」
「どうしたんだ、カルメン」
「人を待っているのよ」
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