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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第七話「紅髪の少女 × 金髪の少女 = 相互反発」
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、怒りっぽいところもあるが根は優しい子だと思う。しかし、だからと言って彼女の契約精霊にならなければならない理由にはならない。


 ――取り合えずは様子見か。


 原作通りに事が運べば、クレアを誘惑する怪しい者が現れるだろう。俺の中ではクレアはもう友達だし、助けないという選択肢はない。


 何事もないのが一番なんだがな、波乱な人生になりそうだ。


 頭の後ろで手を組んで目を閉じ、吹き抜ける風を肌で感じ取る。自然と一体になる感覚を掴めと師匠によく言われたな。


 今は何をしているんだろうか。遠い場所にいる恩師を思い出していると、ザッと草を踏む音が頭上からした。


「何をしているんですの?」


 目を開くと、逆さまのお嬢様が自分の顔を覗き込んでいた。ここまで接近を許すなんて気を弛みすぎた。


 まだまだ修行不足だな、と胸の中で苦笑しながら体を起こす。


「良い天気だからな、日向ぼっこをしていただけだよ。そういう君はなにを?」


「リンスレット・フローガルフですわ。リンスレットで構いません」


「わかった、なら俺もリシャルトでいい。それで、リンスレットは何を?」


「ええ、それでしたら――」


「お嬢様ー!」


 リンスレットの視線の先、俺の背後からバスケットを持ったメイド服姿の女性がこちらに向かって走っていた。


 お嬢様ー、と手を振りながら長いスカートを翻したその女性は安定した走りを見せ――盛大に転けた。


「きゃあっ」


「おっと」


 縮地で女性の元に向かい、腰を支えることで転倒を防ぐ。手放したバスケットも回収済みだ。


「危ないところだったな。もう少し気を付けろ」


「は、はひっ! あ、あああありがとうございましゅ!」


 メイド服姿の女性――もうメイドでいいか――は顔を真っ赤にしてわたわたと手を動かした。


「――? まあ、次からは気を付けろ。どこか挫いたりしてないか?」


「は、はい! 大丈夫です!」


「そうか、ならよかった」


「キャロル!」


 後ろからリンスレットが息を切らせてやってきた。余程心配したのか、ペタペタとメイドの体を擦り痛くないかと確認している。


「――ふぅ、よかったですわ。もう、キャロルはドジなのだからあれほど走ってはいけないと行ったではありませんか!」


「あぅ、申し訳ございません、お嬢様」


 リンスレットは俺に向き直ると頭を下げた。


「キャロルを助けていただいて感謝しますわ、リシャルト様」


 リシャルト“様”? まあ、良家の子女だから様呼ばわりするのは仕方がない、か?


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