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ラインの黄金
第一幕その九
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第一幕その九

「この契約に関してはじっくりと考えられることを」
「だからどうだというのだ?」
「どうしても実現しかねること、成功しないことをやるなどと誰が誓えますか?」
「ほら、見なさい」
 フリッカは今のローゲの言葉を聞いてすぐに夫に顔を向けた。
「こんな男をどうして頼りにされるのですか?」
「ローゲ、御前は炎だが」
 今度はフローが怒った声で彼に言ってきた。
「今度は嘘と呼ぶぞ」
「忌々しい炎だ」
 ドンナーはその鎚を彼に向けていた。
「まずは貴様をこの鎚で成敗するぞ」
「また何を仰るのか」
 ローゲは彼等にそう言われてもやはり平気な顔をしている。
「私はちゃんと働いていますよ」
「まあ待て」
 ここでヴォータンが両者の間に入った。
「ここはローゲの知恵しかないのだからな」
「またいつものようにローゲを庇って」
 フリッカはそんな夫の態度に腹を立てて仕方がなかった。
「何の得があるのですか?」
「この男は知恵を小出しにするがだ」
 ヴォータンは言う。
「それだけに中々値打ちがあるのだ」
「小出しにすることもない」
「そうだ。報酬をだ」
 ファフナーとファゾルトにすればその通りだった。
「早く出すのだ」
「さあ、知恵を出すのだ」
 ヴォータンはあらためてローゲに顔を向けて問う。
「御前のその知恵をな」
「思えば私も難儀なものです」
 ローゲはヴォータンのその言葉を聞いて言うのだった。
「いつも恩を仇で返される。それが私の運命でしょうか」
「そうしているのは貴方ではないの?」
 フリッカは彼に対しても抗議めいた言葉を出す。
「いつもいつも」
「まあ聞いて下さい。私は城の中だけを見てきたわけではないのですよ」
「他の場所も行ったというのか」
「だからここに来るのが遅れたのです」
 こうヴォータンに答える。
「それでなのですよ」
「そうだったのか」
「そうです。いや、世界中歩き回って愛と見合うだけのものを探しましたが」
 彼は言う。
「しかしそれはない。世界は思ったより貧しいこともわかりました」
「そんなことを今更言ってどうだというの?」
 やはりフリッカは彼には厳しい。
「そうやってまた言い逃れをするの?」
「それはしませんよ。まあ誰も愛を断とうとはしませんね」
「その通りだ」
 ヴォータンにもよくわかることだった。
「それでは生きている意味がない」
「しかしです。私は知りました」
「知ったとは?」
「この世でただ一人。愛を諦めた男がいました」
 今度語ったのはその男のことだった。
「その男はニーベルングのアルベリッヒ」
「あの男か」
 ヴォータンは彼の名を聞いて呟いた。
「確か女に汚かったな」
「しかし愛を諦めラインの」
「ま
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