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ドラゴンクエストV 勇者ではないアーベルの冒険
第43話 そして、どっちへ・・・
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俺の体は上下ぶれることなく浮いている。
日頃の特訓の成果だ。
俺の手はテルルの支えになっていた。
「ありがとう、アーベル」
テルルは、俺の支えがあるとはいえ、ロープを渡るのに不安だったのか、顔が赤くなっていた。
最後のほうは、俺の腕に手を回したりしていたから、どうやら高所恐怖症だったかもしれない。
「一応、このパーティのリーダーですから」
俺は、苦笑しながら答える。

「アーベル、すごいです」
「アーベルさん。俺にも使えるのかな」
タンタルが俺の詠唱をまねようとしていた。
俺は、慌ててタンタルの行動を押しとどめる。
「タンタルさん。今は止めた方がいいですよ」
「どうゆうことですか?」
「この呪文は、慣れが必要です。今のタンタルさんのMPでしたら向こう岸に着く前にMPが無くなります」
「そうか、チャンスだったのに」
タンタルは非常に残念がっていた。

セレンがロープを渡るときは最初から、俺の腕をくんでいた。
彼女も高所恐怖症なのだろう。
緊張のため、顔が赤くなっている。
俺も、少し緊張していた。
セレンの胸が腕に当たるため、呪文の制御に影響が出ないようにすることに苦労していた。俺の精神集中を乱さないという意味で。


全員を向こう岸まで届けると、俺は思わずつぶやいた。
「俺にとっての本当の問題は、この先にあるのだよね」
目的地にたどり着くためには、この先にある旅の扉を使う必要があるのだ。


俺達は、旅の扉を通り、目的地に到着する。
タンタルは「くちぶえ」を吹いて、モンスターを呼び寄せる。
タンタルの話では、慣れてしまって、一日中「くちぶえ」を吹いても問題ないそうだ。
この調子で練習をしたら、一芸として完成するかもしれない。

目の前には、銀色のスライムが現れた。
「よくやった、タンタルさん」
俺は、毒針を握りしめてメタルスライムに向かっていった。

このモンスターは防御力が非常に高く、攻撃呪文が通用せず、すぐに逃げるという特性を持っている。
その代わり、倒せば大きな経験値を得ることができる。
そして、俺が持つ毒針は確実にメタルスライムにダメージを与えることが出来るのだ。
「決まったか」

素早い動きをしていたメタルスライムは、俺の攻撃を受けると、動きを止めて崩れ去る。
見た目では何処にあるのかわからないが、急所にあたったようだ。
毒針で攻撃した場合、急所に当たると一撃で倒すことができる。

あっというまに、俺達のレベルが上昇する。
単調な作業ではあるが、俺達は手を緩めることなく、戦いを続ける。
ここで得られた経験が、いつか大魔王討伐につながることを信じて。
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