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ラインの黄金
第二幕その五
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第二幕その五

「荒立つことはありません」
「落ち着けというのだな」
「その通りです。それでアルベリッヒよ」
「今度は何だ?」
 またローゲとアルベリッヒの話になっていく、
「御前のその仕事は確かに凄いものだ」
「それは認めるのだな」
「そうだ。御前がその宝で考えている計画が成功したならば私は御前を讃えよう」
「媚びているのか?」
「媚ではない」
 得意の話術でそれは否定する。
「月や星達はおろか燦然と輝く太陽でさえも御前に奉仕するだけになってしまうな」
「その通りだ」
「しかしだ」
 ここからローゲは言うのであった。
「その宝を積み上げるニーベルングの者達が御前に邪心を抱くことなく従う」
「それがどうしたのだ?」
「それが重要だと思うがな」
 アルベリッヒに人望や魅力がないといったことをわかっての言葉である。彼はただの狡猾で傲慢な支配者でしかなくニーベルングの者達にも内心敬愛されていないのだ。
「指輪がなくてもな」
「この指輪はわしからは離れぬ」
 ここで左手の薬指にある指輪をローゲ達に見せた。それは確かに黄金に眩く輝いている。しかしその輝きには何か得体の知れない不気味な赤もあった。
「決してな」
「そう断言できるのだな?」
「一つ言っておこう」
 不快感を露わにさせた顔でローゲに言ってきた。
「御前は自分が一番策略に富み他の者は全て愚かだと思っているな」
「それは買い被りだがね」
 肩を竦めさせてみせての言葉だった。
「私でもそこまでは思っていないさ」
「それでその知恵を働かせてわしを陥れようとしているな」
「また随分と疑い深いな。わかっていたが」
「だからだ」
 ここでまた言うアルベリッヒだった。
「わしは考えたのだ」
「そうしてどうしたというのだ?」
「これを見るのだ」
 言いながら出してそのうえで神々に見せたものは金と銀のあの帽子であった。縁のないその帽子を彼等の前に突き出してみせるのだった。
「これをな」
「中々見事な帽子だな」
「これは我が弟ミーメに作らせたものだ」
 ローゲがこのことを知らないと思っているのである。
「我がニーベルング族の中で最も細工の巧みなあいつにな」
「それでか」
「そうだ。これを使えばだ」
 彼はさらに言う。
「己の姿を思うがままに変えることができるのだ」
「それはまた凄いことだな」
 ローゲはまた驚いてみせるのだった。
「そんなものを手に入れたのか」
「そうだ。わしを探そうともその姿は見えない」
 まずはこのことを告げる。
「わしの方では人目にかからず何処にでもいられる。だからわしは最早何も恐れぬ」
「ふむ」
 ここまで聞いてわざと顎に右手をやって考える素振りをみせるローゲだった。
 そうしてそのうえで
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