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ラインの黄金
第一幕その十一
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第一幕その十一

「それだけです。泥棒が盗んだものを盗み返す」
「泥棒が盗んだものを!?」
「その通りです。簡単ではありませんか」
 ヴォータンに対しての言葉だった。まさに囁くように。
「ですがアルベリッヒも抵抗するでしょう」
「そうだな」
 これは容易にわかることであった。
「間違いなくな。そう簡単には手渡したりはしまい」
「ですから賢明かつ巧妙にことを運びましょう」
 ローゲはまた言う。
「そしてあの泥棒を裁きラインの乙女達にあれを戻しましょう」
「ラインの乙女達か」
 だがヴォータンはその名前を聞いても不快な顔を見せるだけであった。
「あの者達が何だというのだ」
「何だとは?」
「あの娘達といえば」
 フリッカもまた不快感に満ちた顔を見せてきた。
「色々な相手をかどわかしからかってばかりだというのに」
「だから戻されなくていいと」
「そうです」
 ローゲにもはっきりと答えるのだった。
「ですから構いません。戻さなくとも」
「いや、そうはいかないのでは?」
「いいのです」
 神々はそんなやり取りをしていた。そうして巨人達もあれこれと話をしていた。
「兄者」
「何だ?」
「その黄金はフライアより価値があるぞ」
 ファフナーが兄に話していた。
「黄金の魔力を使えばだ」
「うむ」
「永遠の青春を得られる」
 こう話すのであった。
「だからここはだ」
「どうするのだ?」
「わしに任せてくれ」
 こう兄に話しそのうえで。ヴォータンに対して言うのだった。
「ヴォータンよ」
「何だ?」
「フライアはいい」
 こう言うのだった。
「それよりもずっと小さな報酬で解決してもいいのだが」
「ずっと小さなか」
「そうだ。わし等にはニーベルングの赤い黄金で充分だ」
 こう話すのである。
「それでな」
「何だと!?」
 しかしヴォータンはそれを聞いて怒りの声をあげるのだった。
「あれは私のものだぞ、あの黄金は」
「あの城を築くのはかなりの苦労だった」
 ファフナーは城のことを話すのだった。
「アルベリッヒを捕らえることは過去のあの者達の戦いで常に失敗したが」
「忌々しい奴だ」
 ファゾルトもい忌々しげに言った。
「常に悪知恵を使うからな」
「だが貴方なら違うな」
 意地悪そうな目でヴォータンを見て言うファフナーだった。
「そうだな。どうだ?」
「私を利用するというのか」
 ヴォータンはファフナーの今の言葉を聞いてさらに不機嫌さを増してきた。
「あのアルプを捕まえる為に。貴様等の敵を捕まえる為に」
「それがどうしたというのだ?」
 こう言われてもファフナーは平然としている。
「わし等にとってはこの程度は軽い報酬ではないのか?」
「さあフライア」

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