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くらいくらい電子の森に・・・
第十五章
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断る」
『先輩!…ランドナー継承したばっかで、自転車持ってないんでしょ?』
「だったら何だ」
『その…雇い主が、このミッションが成功すれば、その…紺野さん、まじでいいんですか?』
構わん、マハラジャになるよりはマシだ。と意味不明の言葉が聞こえた。…駄目だ、全く状況が掴めん。何だマハラジャって。お前は一体、何のバイトをしているんだ、姶良よ。
『…ピナレロの、ロードバイク買ってくれるって。なんでも好きな車種を』
「マ、マジか――――――――――――――――!!!」
自分の声とは思えないような絶叫が、喉からほとばしり出た。…一生懸命バイトで貯めた12万。それでも手が届くのは精々トレヴィソ…と諦めていたのに、ふいに降って沸いたティアグラ、いやガリレオ、そ、それともFP5アルテグラ!!遂に俺が、カーボンフレームに跨るその日が!!…すげぇ、まさにマハラジャ降臨せり!!
『あの…犯罪じゃないけど、かなりやばい仕事です。何も聞かずに引き受けてくれたら、それこそフラッグシップクラスでもいいって…』

―――フラッグシップ!!!


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一瞬、あの燦然と輝くピナレロの至宝『ドグマFPX』という言葉が頭をよぎったが、ぷるぷると首を振って追い出す。そりゃ、いくらなんでも分不相応だ。
「…いや、アルテグラで手を打とう、姶良よ」
『そうなんですか?…いやそれでもすごいけど!』
「ドグマなんぞ手に入れて、盗難に遭った時の喪失感を想像するだに恐ろしい。ていうかそんな世界を知ってしまったら、安い自転車に戻れなくなる気がする」
『…あ、なんか分かります。僕もそうかも』
…姶良は今期の1回生の中で、最も俺と価値観が近い。それだけに心配な面もある。たとえば大学4年間、こいつには彼女ができないかもしれない、とか。
「で、いつ出るんだ」
『急ぎです、今すぐでも!』
「…分かった、駐輪場に来い」
このかぐわしい布団と、藍染の作務衣を脱ぎ捨てて元の汗臭い服に身を包むのかと思うと気が滅入る思いだったが、アルテグラの為だ、仕方がない。
――さらば、笑顔が素敵なナースよ。次はアルテグラで迎えに来ることを誓おう。



瞳で埋め尽くされた、ご主人さまの墓標を漂う。…いつか、ご主人さまが永遠に眠る日がきたら、一緒に寄り添って眠りたい。そう、思ってた。
ディスプレイが提供してきた情報は、ご主人さまの死。えぐり抜かれた眼球。何度も、何度も表示する。それがご主人さまの、最後の姿だから。そして何度も何度も繰り返す、ご主人さまの最後の声。
『雨にも負けず、風にも負けず、丈夫な体をもち…』
それだけの。
たった、それだけの願いだったのに。
あいつらは、それを踏みにじった。

―――許せない。

絶対に、許さない。
歯を一本残ら
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