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戦国御伽草子
参ノ巻
守るべきもの

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「ねぇ村雨の正室の様子おかしくなかった?」



「ああ」



「普通好きな人の顔、見忘れる?まぁ最後に来たのが四月前じゃ仕方がないのかもしれないけどさ。なんかぼんやりして、夢見がちって言うか」



「そうだな」



 あたしと速穂児(はやほこ)は、佐々家に返ってくると、早速額をつきあわせて話し始めた。



「肝心なのは、前田を(かた)り、村雨が刃を向けるように仕向けた男は誰だと言うことだ」



「でも、並々ならぬ恨みよ。だって、そこまで手の込んだことするなんて…自分で忍放った方が早いじゃないの」



「表沙汰になるとまずい相手かもしれない」



「たとえば?」



「例えば、佐々家」



 思いもかけない言葉に、否定がすぐに出てこない。



 まさか、そんな。いやでも、確かにそしたらこれだけ回りくどいのも納得できる…。



 いや、でも、うち仲良いし!そんなことないわよ、ねっ!



「そんなこと言いはじめたらどこもかしこも怪しいわよ!」



「そうだ。だが瑠螺蔚(るらい)、あるだろう、最も連想しやすく失脚させられておまえに恨みを持っている家が」



 あたしははっとした。



「…柴田家」



 鷹男(たかお)の側室、発が食事に毒を入れようとした現場を押さえて、あたしが柴田家を失脚させたのは有名な話。



「そうだ。ただ違うことももちろん考えられる。調べるのは俺に任せておけ。おまえは自分の身を…なんだ?」



 速穂児が顔を顰めて、障子の向こうを見た。あたしも気づいた。



 なんか、五月蠅い。



 どんがらがらがらがっしゃんごっとんどどどどどどとなんだかものすごい音が近づいてくる。



 なんか、くる!?



「由良ーっ!おまえっ、こ。る、瑠螺蔚さん!?」



「きゃーっははははははは!やだぁ高彬(たかあきら)、なによそれ!」



 あたしはひぃひぃ言いながら無様な高彬を指さした。



 体は縛られていたらしく、膝から肩まで縄が幾重にも巻き付いていて、自由なのはその膝から下と手首から先のみ。



 更に縄の先には鍋やらおたまやら木杓子やらをこれでもかという程ぶら下げており、動くたびにがたんごとんとそれらが鳴子の役目を果たして楽しい音を奏でる。



 あまりと言えばあんまりな姿に、あたしはお腹を抱えて笑いすぎて涙が出てきた。



「る、瑠螺蔚さんなんでここに…これは由良が!」



 高彬は見たことない
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