暁 〜小説投稿サイト〜
アルジェのイタリア女
第二幕その五
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第二幕その五

「是非共」
「それでは」
「これより旦那様もパッパタチの会員です」
「歌に踊りに料理、そして意中の方が旦那様を」
「それだけあれば確かに極楽」
 やはり頭の中にはイザベッラは全くいない。思うのは一人だけであった。
「わしの好みは五月蝿くてな」
「はい」
「流石に並の女では満足できないと」
「違うのじゃ。女なぞな、どれだけいても問題ではない」
「といいますと」
「わしは思う人は一人でいいのじゃ」
「やっぱりな」
「何でそれで素直になれないんでしょうね」
 タッデオとリンドーロはそれを聞いて囁き合う。女と見れば一直線のイタリア人にとってはムスタファのこうしたへそ曲がりはどうにも理解できないものであるのだ。
「パッパタチでそれが適うのならばな」
「勿論適います」
「酒に料理もついて」
「しかも歌も。言うことはなしじゃな」
「それではどうぞ我々の下に」
「いざパッパタチへ」
「うむ、参ろう」
 ムスタファは笑顔で二人の誘いを受けた。
「ではいざパッパタチへ」
「酒に料理に歌に」
「そしてただ一人の思い人の下へ・参ろうぞ」
 彼等は笑顔で誓い合った。結局ムスタファの頭の中には一人しかいないのであった。それがなければどんな酒に歌に料理も。何の意味もないものであったのであった。
「ではな」
「はい」
 ムスタファはとりあえずは部屋を去った。何か用件を思い出したのであろうか。部屋にはリンドーロとタッデオだけになった。二人はまずは策が成功したのを確かめ合った。
「まずはこれでよし」
「はい」
 ニンマリとした顔で頷き合う。
「それでイザベッラですが」
「パッパタチの他にも何か策があるのか?」
「策ではなく望みです」
「望みとは」
「私達だけでなくここにいる全てのイタリアの者達を逃がしたいと」
「そうなのか」
「はい、奴隷になっている者は全て」
 つまり改宗していない者達である。ムスタファの宮殿には彼等の他にもまだこうして改宗せず奴隷に留まっているイタリア人が結構いるのである。
「彼等もか」
「そうです、そして共に帰ろうと」
「またそれは難しいな」
「彼等はイザベッラが集めるそうですよ」
「じゃがもう改宗して奴隷になっていない者やここがいいという者もいるじゃろう。確かに奴隷じゃがあの旦那様はいい人じゃし何よりもここはいいところじゃ」
「まあそうした人は仕方ないでしょうが」
 そうした人間に無理強いしても仕方がない。それは諦めるのであった。
「しかしそれでもかなりの数になりますね」
「そうじゃ。正直わし等だけでも逃れるのは難しいが」
「あえてやってみるということでしょう」
「ではここはイザベッラに賭けるか」
「はい」
 リンドーロは頷いた。
「それで
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ