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ソードアート・オンライン ―亜流の剣士―
Episode1 損な性格

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自分の性格で損をした、という体験がある人は少なくないだろう。
気弱な人、勝ち気な人、人見知りな人、傍若無人な人……などなど。

そして、俺の場合はこの世界に来るまで意識もしなかったのだが、かなりの『お人好し』だったらしい。



日が暮れ始め少しばかり薄暗くなってきた頃、俺は今日の探索をやめホルンカの村へ戻った。
ここ何週間も歩き続けた村のお決まりのルートを進みながら、大きくあくびを一つ。慣れと言うものは恐ろしいもので、紛いなりにも緊張していたあの頃の気持ちはどこへやら。

滞在期間が長すぎるのも一因だろう。他のこの村を訪れるプレイヤー達が長くとも3日ほどでレベルをあげ、先へと向かって行くのだから言わずもがなである。

ホルンカの周囲の森での狩りの適正レベルは3〜5程度だ…と思う。適正レベルは明確に示されているわけでなく、且つβテスターと呼ばれる予備知識のあるプレイヤーでもない俺の完全な感覚論であるのだが、事実レベルが5を超えたあたりからレベルアップのファンファーレを聞くことが少なくなった。

現在《カイト》という名の俺のアバターはレベル8。ファンファーレはもう2、3日聞かれていない。

ならば、他のプレイヤーと同様に先に進めばいいのでは?と思ったのではないだろうか。

当然何度も考えたことだ。今のままでは圧倒的に効率が悪い。最前線で戦いたい!と強く望んでいるわけでもないのだが、ここが本当にゲームオーバー=死の世界であるのであればステータスは高くて困るということはない。…まぁ、その点においてはデスゲームであろうがなかろうが同じことではあるのだが。

要するに、ホルンカに留まる理由はほとんどないのだ。



ほぼ上の空で歩き、着いた武器屋で背に携えていた片手剣《ブロンズソード》を剣を買ったときから馴染みの――といっても向こうは記憶として覚えてはいないだろう――店主に渡し、メンテナンスを頼む。店主が後ろを振り向き、回転している砥石に剣を数十秒当てるとすぐに刀身はピカピカになった。
…砥石に当たっていないところもあるじゃないか、というのは野暮と言うものだろう。

受け取った剣を背中の鞘におさめ、店を後にした俺は、夕方という時間帯も手伝って多少賑わっている村の中を一軒の家に向かって歩いていた。

目的の家についたとき、家の前には二人のプレイヤーがおり、扉もしっかり閉じられていた。しばらく待っていると中からもう一人プレイヤーが出て来て、その場でシステムウインドウを操作した。新たに装備された剣を抜いたそのプレイヤーに周りの二人から賞賛が送られる。

そんな3人にばれない程度に小さくため息をつきながら、俺は気分が暗くなるのを感じながら家のドアノブに手をかけた。


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