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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
Determination of black
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つその手は、すぐそばにあったキリトの手に触れ、硬直したままの剣を下ろす。その手の持ち主であるアスナは、部屋を彩る黄色の光で黄金に染め上げた栗色の髪を揺らしながら、そっとささやいた。

「お疲れ様」

 その言葉に、キリトの顔に浮かんだ不安と恐怖が一気に掻き消えた。代わりに、途方もない安堵感が胸中より湧き出てきて、彼の顔を染める。
 そしてそれを引き金に、システムはプレイヤーたちの眼前に、平等に一つのウインドウを出現させた。獲得経験値量、分配されたコルの額、ドロップしたアイテム。つい先ほどまで立ちはだかっていた障壁を打ち破ったという、完璧な証。
 それは止まった時を再び動き出させる動力となり、同時にプレイヤーの心に溜まった感情を爆発させる起爆剤となった。一拍の溜めを置いた後、喜びが歓声となって具現し、部屋を飽和させる。そしてここで、マサキの視界が急に暗転し、同時に圧迫感と重量感がマサキを襲った。

「うおっ!?」

 流石のマサキもこれには驚き、声を出してしまう。何とか視界を覆う暗闇を引っぺがすと、つい先ほどまで、マサキの横で他のプレイヤーと同じ表情を浮かべていたトウマの、爽やかな顔があった。

「やった、やったよマサキ!! 俺たち、勝ったんだ!!」

 叫びながら、トウマはさらに強い力でマサキに飛びつき、再び彼の視界を暗闇で覆う。その衝撃でマサキは数歩よろめくが、右足を後方で踏ん張ることによって何とか転倒を回避し、体勢を立て直す。なおも胸の上ではしゃぎ続けるトウマからマサキが脱出すると、今度はチョコレート色のシルエットが視界を覆った。シルエットは右拳を突き出しながらにやりと笑う。

「あんたも見事な剣技だった。コングラチュレーション、この勝利はあんたたちのものだ」

 マサキは咄嗟にビジネススマイルを浮かべ、拳をぶつけて対応する。そして、いくらか落ち着いたトウマも同じく拳を突き合せようとした、その時。
 今まで部屋を埋め尽くしていたものとは、全く逆のベクトルを持った絶叫が轟いた。

「――なんでだよ!!」

 裏返り、上ずったその絶叫は、この部屋に充満した勝利の余韻を一滴残らず吹き飛ばした。代わりに満ちた重苦しい沈黙は、部屋の気温が著しく下がったように錯覚させる。
 振り向いたマサキは、憎々しげにキリトを睨む一人のシミター使いを見つけ、姿を海馬に保管されている膨大なデータと参照した。
 ――確か、彼はディアベルがリーダーを務めるC隊の一員だ。
 見れば、シミター使いの後ろにはC隊のメンバーが勢揃いし、各々がキリトに対して深い憎悪の視線を向けていた。当のキリトは未だ目の前のシミター使いが誰なのか思い出せない様子だったが、シミター使いが次に発した言葉が、彼の記憶を呼び覚ました。

「――なんで、ディアベルさ
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