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くらいくらい電子の森に・・・
第十三章 (1)
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かに比べると管理が甘くて見舞い客でも入れるし、トランクを隠せる布も沢山あるし。看護士さんの出入りがちょこちょこあるかも知れないけど、問題になるほどじゃないでしょう。僕たちはお互い顔を知らない方がいいでしょうから、荷物を置いたら…そうですね、流迦ちゃんの携帯に合図を送ります。取りに来てください」
『成る程、そいつは好都合だな。じゃ、頼んだぜ』
「ちょっと待った!…流迦ちゃんの声を聞かせてください!流迦ちゃんが、元気でいる声を聞かないと協力できない!!」
『…自分が人質になってることは伝えてないから、余計なことを言うなよ』
少し間をおいて、流迦ちゃんが携帯に出た。
「る…流迦ちゃん!従兄弟の郁夫だよ、大丈夫かい?痛いこととかされてないかい?」
『ううん。…八幡さんが優しいわ。八幡さんは、《いい人》よ。とっても綺麗な女の人』
「八幡さん…」
聞き覚えのある名前だった。確か、紺野さんが山奥に軟禁された時に、生贄代わりに置いていかれた新入社員、とかじゃなかったか。紺野さんに目配せすると、彼も小さく頷いた。
「八幡、志乃か…ったく、こんなことにまで巻き込まれやがって要領の悪い…!」
「分かった、八幡さんの言う事をよく聞いて、大人しくしてるんだよ」
『これで納得したか』
「えぇ。珍しく落ち着いてますね。その、八幡さんという女性の方が傍にいてくれているお陰ですね。…彼女、家族以外の男が苦手で。紺野さんには良くして頂いてるから慣れたみたいですが、よく知らない男と二人きりにされると、暴れだしたり、自傷行為に及んだりすることがあるんで、その…気をつけてください」
言い終わる前に、電話は一方的に切れた。携帯を紺野さんに差し出すと、毒気を抜かれたような顔で、おずおずと受け取った。
「…姶良、何をする気だ」
「データは渡さないし、流迦さんも取り返す。ボイラー室に戻ろう」



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「今、どういう状況になってるかというと」
ルーズリーフにペンを走らせて『リネン室』『隔離病棟』『ボイラー室』と書いて○で囲み、『紺野』『烏崎』『流迦』『八幡』と、それぞれの現在位置を書く。
「僕らがデータをリネン室に置いて、流迦ちゃんの携帯に連絡すると、烏崎たちが回収する。そして、烏崎たちの監視のもと、紺野さんが自首。そこでようやく、彼女を解放する…と」
「……そうだな」
柚木も、不安げに覗き込んでくる。目が合ったときに微笑み返すと、ふいと顔を逸らされた。…これは、サークルでも『隠す方向で』かな…。
「まず向こうの人数は、昨日と変わりなければ、死んだ武内を含めて4人。だから今は3人のはず。そこで、データは重いということにして、そのうち2人をリネン室に向かわせた。…さっき、流迦ちゃんが電話口で『八幡さんという女の人は優しい』と言ってたか
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