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SAO編−白百合の刃−
SAO34-それぞれの一日
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「悪いね、愛しの奥さんとイチャイチャチュッチュッできなっちゃって」
「その単語好きだな」
「だって事実じゃん」
「まぁ、否定はしないがな」
「兄のくせに生意気だ」
「うっせ」

 私達は他愛のない話を繰り返しながら二十二層にある広くて人気がない場所を探していた。
 その理由は前線へ戻るための準備というウォーミングアップ。
 今は前線から引き、休暇を取っている身である私はドウセツと一緒に心地よい休みを満喫している。このまま安らぎの時間の中だけで生きていたいと思う程に充実しているつもりだ。でもそれは願望でしかない。いつか必ず私達は前線へ戻り、死と隣り合わせの現実世界へ帰る戦いが始まる。その時になって、休暇を取る前の私よりも弱くなってしまうのは嫌なので、兄を誘って前線へ戻るためのウォーミングアップに付き合わせることにした。
 残り二十五層、約二年かけて一分の四までなんとか攻略することができた。
 もう少しで現実世界へ帰れる。そのもう少しの道のりが険しくて厳しいに違いない。これまで以上に脅威を増していき、当然敵も強くなってくる。少しミスだけで死に繋がることだってあり得ない話ではない。
 実際、エックスから七十五層の攻略状況を訊ねると、難航していると険しい表情で答えてくれた。強気な姿勢を取っているエックスの口から難航という言葉が出てくるのは、強気を沈ませる程の重い二十五層分ってことになるんだろう。

「それで……どれくらいやるんだ?」
「あー……うーん……決めてないや」
「適当だな」
「回数なんて関係ないよ。どうせぶっ倒れるくらいやるつもりだし」

 精神的に披露は溜まるんだろうけど、体力の限界で足が動かないなんてことはSAOでは関係ない。それを有効活用して強くなればいい。時間は常に有限。都合良く待ってくれはしない。

「さて、やりますかね」

 人気がいなくて戦闘するには十分な広さを見つけた私はすぐさまウインドウを操作して武器を十層以下で買える武器に変更、同時に下級のカタナと長棍を薙刀スキルで装着完了する。
 もう薙刀を隠す必要はない。
 それに相手は薙刀でなければ準備を蓄え切れないだろうと思うし、私も相手が二刀流でないと不十分になっちゃうからね。

「デュエルは初撃決着モードでいいか?」
「いいよー」

 私はデュエルメッセージを送ると早々に兄はオプションを決めて受諾する。
 現実ではゲームばかりやっていた引きこもり近かったけど、ゲームの中だと生き生きしている。そしてこの世界では最強とも呼べる二刀流使い。
 それが私の兄、キリトである。
 まったく……いろいろと参っちゃうわね。
 でも……不思議。

「ねぇ、兄」
「なんだよ」

 不思議と緊張とか焦りとか不安がない。心がスッキリする。

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