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カヴァレリア=ルスティカーナ
第一幕その五
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たって?」
 急に安堵した顔になった彼女を見て不思議そうな顔になった。
「これで」
「これでって。一体何の話をしているんだい?」
 当然彼は今まで彼女の身に何があったのか知らない。それが悲劇になろうとも。
「お話したいことがあります」
 彼女はアルフィオの顔を見て言った。
「俺にか!?」
「はい。貴方の奥さんのことで」
「ローラの」
 それを聞いて関心を持たない筈がなかった。顔を向けた。
「朝トゥリッドウを家の側で見たんですよね」
「ああ」
「それです」
 彼女は言う。
「それが何故か。おわかりですか?」
「何が言いたいんだい?あんたは」
 アルフィオには今一つわかりかねていた。サントゥッツァはそんな彼に対して言った。
「私は。恋に破れました」
「恋に」
「はい。貴方の奥さんの為に」
「何ィ!?」
 その言葉を聞いたアルフィオの顔が一変した。
「それはまさか」
「はい、そのまさかです」
 彼女は顔を上げて言った。
「貴方の奥さんがトゥリッドゥを」
「そうか、そうだったのか」
 アルフィオはそれを聞いて納得したように頷いた。
「だからあの時あそこにいたのか」
 濃い髭だらけの顔に憤怒の形相が浮かぶ。
「だからだったんだな」 
 そのうえでサントゥッツァに顔を向ける。
「サンタさん」
「は、はい」
 その顔を見て彼女は自分が何を言ったのかわかった。だが全ては遅かった。もうどうにもなるものではなかった。
「有り難うよ」
 アルフィオは酷薄な声で礼を述べた。
「おかげで。俺のやるべきことがわかったよ」
 シチリアの男がこうした時に何をするのか。もう言うまでもなかった。
「血が見たくなったよ。復讐でな」
「ええ・・・・・・」
「それだけだ。じゃあな」
 そう言い残してその場を後にする。サントゥッツァはまたしても一人になった。
「トゥリッドゥ・・・・・・」
 もう会えないのはわかっていた。自分がしてしまったことだ。どうにもならなかった。ただ教会の清らかな曲が彼女の後ろに、そして復活祭のシチリアに響き渡っていた。

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