暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
SAO編
episode1 スピード&パワー
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 横薙ぎのソードスキル、《スラント》が、並んだゴブリン二体を一撃で葬る。じっくり狙って鎧の隙間を切ったのに加えて背後からの一撃、相当のダメージ補正が発生したことだろう。その攻撃によって『隠蔽』の効果の切れた瞬間、ゴブリンシューターが俺の方にタゲを移そうとする。

 だが、一瞬の間に走り込んだシドによってナイフを持つ腕を弾かれた。

 (速いな……)

 心の中で、舌を巻く。

 ボサボサの波打つ黒髪と、不健康そうな顔。奇妙なほど長い手足に、眠たげな目つきからは想像もつかないが、恐らくは『攻略組』にもそうそういないだろうスピードファイター、シド。確かに俺のビルドは『敏捷』よりも『筋力』を重視したもので、比べること自体が間違っているとは思うのだが、それでも思わずにはいられない。

 疾走するシドの速さは、俺が今まで見たどのプレイヤーよりも上だった。剣も槍も投げナイフさえも、ヤツの体に追いつくことはない。その戦闘スタイルは、俺のよく知る…つまりはSAOの常識とは大きくかけ離れている。

 本来は戦闘は相手の動きを見切ってのステップでの回避やパリィでの防御、その後に攻撃を当てる、というのがセオリーだ。だから基本的にしっかりと相手に正対し、その動作をしっかりと観察する必要がある。だがシドのスタイルは違う。相手を観察することを完全に放棄して、ただその段違いのスピードで動き回って的を絞らせない、というものだ。それの合間に、ほぼ硬直の無い小攻撃や単発の『体術』スキルで敵を攻撃していく。

 (あの硬直の短さは、すごいな…)

 俺の得意とする、というか、好みとする戦闘スタイルは、完全にパワーファイトだ。威力重視の重量級の剣に、必殺のソードスキルで敵を一気に押し切って倒す、つまりは「やられるまえにやる」タイプの戦いだ。だが、だからといって敵もそれにあわせてくれるわけではない。ソロプレイ中、「もっと素早いタイプの技があればなぁ」と思ったことは、一度や二度では無い。

 (あのとき咄嗟に取っちまったけど、『体術』スキルも真剣に鍛えようかな……)

 第二層で受けたクエストで獲得した『体術』スキルだが、取ってしまったはいいが剣がレアドロップの高級品になるにつれてその魅力に取りつかれてしまい、それでの戦闘につきっきりになってしまってろくに鍛えていないのが現状だ。だがこうやってその有効性を見せつけられてしまうと、やっぱり頑張ろうかと悩んでしまう。というかアイツ敏捷一極でよくあのクエストクリアできたな。結構時間かかったろうに。

 そんなことを思う俺を尻目に、シドは両手をだらりと下げてフロア狭しと走り回り、俺を狙っている敵を次々と狙い撃ちしていく。その派手な動きは敵の注意を十分に惹きつけ、移動中で『隠蔽』の効果が薄い俺からのタゲを奪っていく。

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