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トロヴァトーレ
第四幕その五
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「正直に言え、本当のことを」
 マンリーコは詰め寄った。だがレオノーラは真実を語ることができなかった。
「違います」
「いや、違わない」
 マンリーコは彼女の言葉を否定した。
「この監獄の扉を開くことができるのは伯爵だけだ。ならば何があったのかは容易に察しがつく」
「うう・・・・・・」
「言うのだ、不実な女よ。私に誓った愛を売ったと」
「違います」
 青い顔でそう答えることしかできなかった。
「では証拠を見せよ。さもなければ私はここから一歩も動かぬ」
「そのようなことを仰らずに」
「駄目だ」
 しかしマンリーコの決意も固かった。
「裏切りの代償なぞいらぬ」
 彼にも誇りがある。そんなものを受け取るわけにはいかなかったのだ。
「違います」
 だがレオノーラはそれを否定した。
「決してそのようなことは」
「違うというか」
「はい」
 マンリーコのその問いにも毅然として答えた。
「私に戯れ言を言うような女だったとはな」
 しかしマンリーコはそれを信じようとはしなかった。
「所詮そのような女だったということか。私が愛した女は」
「違います」
 しかしレオノーラはその怒りの言葉も否定した。
「私を信じて下さい」
「何を信じるというのだ」
 マンリーコはまた言い返した。
「私を裏切った女の言葉を。愛を売った女を」
「私はそのようなことはしておりません」
「では何故私を逃がすことができるのだ」
「それは」
 やはり言うことはできなかった。
「言えないだろう」
 そしてそれこそがマンリーコの疑念の根拠であるのだ。わかってはいてもどうしても言うことができないのだ。

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