第一幕その二
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は暗闇の中様々な禍々しい存在に姿を変えると言われているな」
「はい」
それを聞いて顔を青くしない者はいなかった。篝火の中にその顔が映し出される。
「ヤツガシラやタゲリに化けるという」
フェルランドは語った。
「カラスやフクロウ、ミミズクにもな。夜が訪れると共に闇の中を徘徊し、夜明けと共に去ると言われている」
「何と恐ろしい」
「その眼は邪悪な光で爛々と輝いていると言われている。従者の一人がその眼に見られて死んだという。その母親を殴った者がだ」
「ではまさか」
「フクロウに化けた女にな。真夜中にその黄色く光る邪な眼を見たらしい」
「何ということだ」
「恐ろしい女だ」
彼等は口々に恐怖の言葉を述べた。
「これで話は終わりだ。これで目が醒めたか」
「待って下さい」
ここで若い兵士の一人がフェルランドに尋ねた。
「何だ」
「その女の名は何といいますか」
「名前か」
「はい。知っておきたいのですが」
「うむ。それはな」
「はい」
皆耳をすます。ゴクリ、と喉を鳴らした。
「アズチェーナという」
「アズチェーナ」
「そうだ。よく覚えておくがいい。この禍々しい名を」
「はい」
彼等は頷いた。それを見届けるとフェルランドは席を立った。
「ではこれでいいな。警護を再開しよう」
「はい」
彼等はそれぞれの持ち場に戻った。その頃宮殿に庭に二つの影があった。それはいずれも女のものであった。
「姫様」
そのうちの一人がもう一方の女の影に声をかける。
「王妃様が御呼びですよ」
黒い髪をした小柄な女性であった。まだ若く初々しい顔立ちをしている。
「わかっております」
声をかけられたもう一人の女が答える。高く澄んだ声で。
茶色く長い髪に青い湖の様な瞳を持つ美しい女性であった。その顔立ちはまるで絵画の様に整っており、気品が漂っている。背は高くスラリとしている。その容姿が白く綺麗な服によく合っている。
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