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トロヴァトーレ
第三幕その一
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第三幕その一

                   第三幕 ジプシーの息子
 修道院前での衝突からまた数ヶ月が過ぎた。内乱はその間に状況が変わり皇太子側に有利となっていた。それはこのカステルロールにおいても同じであった。
 今ルーナ伯爵とその軍はマンリーコ達が篭る城を取り囲んでいた。城の周りには無数の篝火が灯り、そして白い天幕がその中に映っていた。
 その中で一際大きく豪奢な天幕があった。それこそ指揮官であるルーナ伯爵の天幕であった。
「もうすぐだな」
 その前にいる兵士達がそう話していた。
「ああ、もうすぐだ」
 別の者がそれに答えた。
「この刃で武勲を挙げる時だ」
 一人の兵士が手に持つ槍の穂の手入れをしながら言う。
「敵を倒し武勲を挙げる。今その時が来ようとしている」
「その通りだ」
 ここでフェルランドが彼等のところに来た。
「もうすぐ援軍が到着する。そうしたら総攻撃に移るぞ」
「はい」
 兵士達は彼の言葉に頷いた。
「その時まで英気を養っておけよ」
「わかっております」
 ここで高らかにラッパの音が陣中に響いてきた。
「おっ」
 皆ラッパの音がした方に顔を向けた。
「来たか!?」
「来たぞ!」
 遠くから一人の兵士が駆けて来た。勇ましい音楽と共に弓を持った兵士達の一団がやって来た。
「遂に来たか!」
「待っていたぞ!」
 それは援軍であった。彼等は胸を張り陣中を行進していた。
「これで全ては整った」
 フェルランドは彼等を見ながら満足気に笑った。
「明朝攻撃予定だ。あの城には何があるかわかっているな」
「はい」
 兵士達は強い声でそれに答えた。
「勝利と栄光、そして」
「戦利品だ」
 フェルランドはそれを口にして兵士達の士気を高めることにした。
「あの城には宝の山があるそれも諸君等のものだ」
「おお」
「戦いに勝てばそれは全てそなた達のものだ。それだけではない」
「まだあるのですか」
「うむ。報酬だ。あの城を陥落させればこの戦いは終わったも同然だ」
「はい」
「殿下より特別の報酬が与えられる。貰えるのはあの城にあるものだけではないのだ」
「それはいい」
 兵士達は期待に眼を輝かせた。
「我等を勝利と栄光、そして富が待っている」
「そして今それが手に入ろうとしている」
「勝たなければな」
「ああ」
 兵士達の士気は天を衝かんばかりになった。そしてそれぞれの持ち場に戻って行った。
「よし」
 フェルランドはそんな兵士達を見て会心の笑みを漏らした。そして彼は伯爵のいる天幕に入った。
「兵士達の士気はどうか」
 伯爵はフェルランドにまずそれを聞いた。
「まさに天を衝かんばかりです」
「そうか」
 彼はそれを聞いて満足したように笑った。

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