暁 〜小説投稿サイト〜
アドリアーナ=ルクヴルール
第四幕その三
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第四幕その三

「王妃様のものにそっくりね」
 姫君がうっとりとした眼差しで言った。
「ええ。まさか本当にそうだったりして」
 女神が言った。彼女もその首飾りに見とれている。
「まさか。そんな事したら私はこんなところにはおれませんよ」
 ミショネは少し慌てて言った。
「そうだね。監督がそんな事するわけないし」
「そんな事をする度胸が無い」
 高官と庶民が囃し立てる様に言った。
「からかわないで下さいよ」
 ミショネはその言葉に対し困ったような顔で言った。
「けれど本当に綺麗・・・・・・。ミショネさん、有り難うございます」
 アドリアーナは首飾りを受け取り彼に深々と頭を下げた。
「いえいえ、そんなに感謝されたらかえってこっちが畏まってしまいますよ」
 彼は謙遜して言った。
「けれどこんなものを一体どうやって手に入れたの?」
「そうよねえ。ちょっとやそっとじゃ買えないわよ、こんなの」
 女優達が少し首を傾げて言った。
「それは簡単です。ブュヨン公爵に譲って頂いたのです」
「公爵に!?」
 ミショネの言葉に一同思わず声をあげた。
「叔父の遺産を使いましてね。それで譲って頂いたというわけです」
 彼は少し芝居がかった調子で言った。
「けれどあの遺産は結婚資金にされるおつもりだったのでしょう?ご結婚は・・・・・・」
「そのお話は綺麗さっぱりとなくなりました。まあ私の柄ではないですし構いませんよ」
 彼はアドリアーナに対し笑って言った。だが密かに心の中では泣いていた。
「私の為にそこまでして頂いて・・・・・・」
 アドリアーナは彼の両手を握って言った。
「有り難う、本当に有り難うございます・・・・・・」
「いえ、本当に構いませんから。私は私の気の済むようにしただけですから」
 彼は彼女のその言葉だけで充分だった。それこそが彼の生きがいなのだから。
「ところでアドリアーナさん」
 男優二人が彼女に話し掛けて来た。
「はい」
 アドリアーナは彼等の方へ顔を向けた。
「同僚としてお話があるのですが」
「私達も」
 女優達も入って来た。
「何でしょうか」
 アドリアーナはそれに対して尋ねた。
「是非舞台に戻って来て下さい。皆貴女を待っていますよ」
 彼等は口を揃えて言った。アドリアーナはそれに対し微笑みで返した。
「そうですね。皆さんが私を待っていて下さるのですから」
 彼女は半ば自分自身に言い聞かせるように言った。
「もう一度舞台に戻り、そして皆さんに私の演技を見てもらいましょう」
 彼女は言った。これは自らへの決心の言葉であった。
「ええ、是非そうすべきです。パリの皆が貴女をお待ちですよ」
 ミショネが笑みをたたえて彼女に言った。
「はい。ところで私がいない間に何かありま
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ