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西部の娘
第一幕その二
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葉巻を噛んで言った。
「まあ連中は人殺しとかはしないけれどね。盗賊にしちゃあやけに大人しい」
「その分盗みっぷりが凄い。堂々としてやがる」
 ランスはソノーラの言葉に賞賛が混じっているのを聞いて少し不快になった。
「何でもアメリカ人じゃないそうだが。スペイン人かい?」
「いや、聞いたところによるとメキシカンだそうだ。まあそんなに差はないな」
 メキシコ人への差別はこの頃からあった。
「ニック、ここも用心しといたほうがいいぞ」
 ソノーラはニックに対して言った。
「驚かさないで下さいよ」
 ニックはそれを聞いて震え上がって言った。
「脅かしじゃないぞ。連中の頭はかなり切れる奴らしい」
 ソノーラは真剣な表情で言った。
「しかもかなりの拳銃の腕前で命知らずの奴らしい。ぼうっとしてるとすぐにやられるぜ」
「何か怖いな」
 ニックはそれを聞いて縮こまっている。
「おい、そんなにニックを怖がらせるな」
 ランスはその様子を見て苦笑して言った。
「安心しろ、この店は俺が絶対守ってやる」
 彼はニックに微笑んで言った。
「何せ俺はミニーと結婚するんだからな」
 そう言ってニヤリ、と笑った。
「あんた結婚してたんじゃ?」
 ソノーラが尋ねた。
「この前別れたよ。女房の親父が切れちまってな」
「おやおや、どうしてだい?」
「こんな辺鄙なところに何時までいるんだってな。生憎あの親父は東部の頭のお固い先生様でね」
「学校の先生か。ならこんなところはお嫌いだろうな」
「フン、俺達アメリカの男は自分でものを掴み取るんだ。その為に皆ここにいるんだろうが」
 彼は顔を顰めて言った。酔いはそれ程回ってはいないというのに。
「その為に俺はカンザスからはるばるここにやって来たんだ。こいつだけを頼りにな」
 そう言って腰の拳銃を指し示した。
「言うねえ。じゃあ早いとこあの盗賊共をやっつけてくれるんだな」
「おお、あいつ等の首を取れば賞金が山程手に入る。絶対やってやるさ」
 そう言うとテキーラを口にした。

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