暁 〜小説投稿サイト〜
Muv-Luv Alternative~一人のリンクス~
プロローグ
一羽の鴉
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 深く沈んでいた意識がゆっくりと覚醒してゆき、閉じていた瞼がゆっくりと持ち上がる。

 意識が薄い、体が重い。

 まだ覚醒し始めたばかりの脳なので、今自分の置かれている状況を咄嗟に理解する事が出来ない。

 霞む視界に写るのは既に見慣れた、自らが操る機体の座席。自分が機体の中に居る事が理解出来てから瞬時に網膜投影に切り替える。

 そして網膜投影に切り替えた瞬間、視界を埋め尽くしたのは見たこともない澄み渡った青空に…一面に広がる見慣れた廃墟の数々。まるで何かに磨り潰されたかのように粉々に砕けた石に、重たい物に突っ込まれたかのように崩れている見たこともない建物。

 咄嗟に自らのオペレーターとの通信を試みるが、聞こえてくるのは雑音のみ、幾ら時間が経ってもあいつの声が聞こえる事はなかった。

 一度オペレーターとの通信は諦め、現状を確認するために辺りを見渡す。

 そして視界が捉えた奥の方に倒れている半壊上体の人型機械。

 それを見た瞬間ACか?などと言う疑問が浮かんできたが、細部の形状から違う事が分かる。その機体は既に上半身だけと言う無残な状況だが、残っている腕、胴体、顔のパーツから何処の企業にも製造されていないパーツだ。似ていると言えば似ているが、それでもあんなパーツは見たことがない。それだけでACではない、と決め付けるのは早計かもしれないが、一応現在存在するパーツは全て把握している。その形、特性、特化、などと言った全てをだ。だからこそ判断出来る。あれは俺が知る機械ではない。

 と、そう判断したのは良いが、なら俺の視界に写ったあの機械は何になる?何処かの企業が新しいスタンスで製造した人型機械か?いや…そんな話は聞いた事もない。

 …どうも今考えても分かりそうにないので、一先ず網膜投影を切り替え、本来の視界に戻し、自分が乗る機体のコアを起動させる。少しばかり起動するかどうか不安だったが、何事もなく起動出来た。

 低い重低音が体の芯に響き渡るかのように鳴り響き、それと同時に暗かった座席も照らされる。そして視界の片隅に今自分が乗っている機体の状況が明確に表示される。

「どう言う事だ?」

 視界の片隅に機体の状況が表示された事までは良かった。だがその数値が可笑しい。俺は先程まで複数の企業のACに追われていた筈だ。そうなれば当然被弾もしたし、銃の弾丸も殆ど底を尽きていた。

 なのに俺の視界に写る機体状況、弾丸数は全て新品同様になっている。

 一体俺に何が起こった…?

 最初は奴らに追いつかれ、機体を落とされ捕らえられたと考えたのだが、そうなると機体を新しくする必要性もないし、何より俺が機体に乗っている事が可笑しい。どう考えてもそれはあり得ない。

 自分が無意識に機体を修理した、な
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ