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弱者の足掻き
十一話 「『二人の』為」
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ラ刀の血を拭って仕舞う。
 ふと思い立ち、アズマの死体を探る。

「ああ、やっぱり」

 いつでも次の準備を欠かさない、という発言と容易く仲間を切り捨てる行動からもしかしたらと思ったが正解だ。思ったよりは少ないが懐からいくつかの貴金属が出てくる。これなら小さくて隠し持てるし金になる。

 盗品だとしても持ち主が誰だかわからない。返すにしてもどうやって手に入れたのか説明する事もできないのだ、有り難く頂戴していこう。金はあって困らない。襲うことを計画した時からもしかしたら、と思っていたのだ。
 死人には必要ないものだ。

「普通に盗人だな俺。まあ、殺しといていまさらか」

 個人が特定できるようなものがない事を確認し、懐に仕舞い込んで立ち上がる。
 最後にもう一度、自分のした事を目に焼き付けて俺は白の方へ走っていった。






 戻った場所では喉を一文字に開かれた四人が血の中で仰向けに事切れていた。
 血の匂いが鼻につくそこで、赤く染まりきったナイフを握った白が俺に気づき、いつも通りの微笑みで近づいてくる。

「ちゃんとやったな、偉いぞ」
「ありがとうございます。大丈夫でしたか?」
「ああ、お前に心配されなくても大丈夫だ」

 返り血か白の頬に付着していた血を指で拭い、そのままその頭をわしゃわしゃと撫でてやる。
 口は拭ったし水ですすぎもした。吐いた事に気づかれてないとありがたい。
 
「回収できるものは回収して火は消しました。死体は隠しますか?」
「ああ。ホントなら穴で埋めたいが、人が向かってる可能性があるし簡単にでいいか」

 死体を引きずって草陰に隠したり近くの崖下などに落とす。
 犬なら一発、仮に今すぐには見つからずともいずれ腐臭で発見されるだろう。気温も低いことだ、暫くは大丈夫と思うが。

 偽装になれば、と白が使ったナイフの柄を一旦拭いその内の一人に握らせておく。ついでにアズマから回収した貴金属の内二つほど懐に忍ばせる。仲間割れだとでも思われたら嬉しいが、どうだろうか。

「……帰るか」
「ええ。服はどこで変えますか? 変化すれば誤魔化せますが、流石にこのままはマズイです」
「近くの街で買うよ。金はあるから好きな服買ってやる」
「どんな服でもいいですよ僕は。イツキさんの好きなので」
「女物のセンス何て未知の世界だ。求めるな」

 荷物を背に家がある街の方角へと二人で歩き出す。

 帰るまで少なくとも三つは町や街を通らなければならない。近くの街についたら服を買わなければ。それにカジ少年たちへの土産も何か買えたら買おう。
 何か家出の武勇伝でも求められるかもしれない。その時はどうしようか。精一杯、馬鹿な話をしてやろう。

 今となっては酷く遠く感じる友人
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