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弱者の足掻き
十一話 「『二人の』為」
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身の血が凍るような冷たさを感じ夜の静けさが妙に耳に響く。
 首にある手に押されるように、追い立てられるように青年は止まりそうな体を進めされる。
 そして唐突にその首から手が離れ笑いながらアズマが青年の背を叩く。

「おいおい冗談だよ! 黙るからもし乗ってきたらどうしようかヒヤヒヤしたぞ」
「そ、そうですよね。いや、オレ分かってましたよアズマさん優しいですから」
「役に立つ内に捨てるわけないだろ全く」
「……はは。冗談がきついですよ」
「本当なら適当な宿に泊まっていたのにそれを山の中か……顔見られる屑はやっぱ邪魔だな。二人ほどヤっちまったしさっさと動かないと。盗みを仕事じゃなく快楽みたいに考えやがって馬鹿どもが」

 男たちは盗賊だ。
 野盗、強盗と言い換えてもいいだろう。

 ここにいる二人と他に五人、計七人。通行人を襲ったり町の富裕層の家に押し入って盗むのが仕事だ。
 つい先日も“仕事”をしたのだが、その際アズマからの指図を忘れ調子に乗った三人かが時間を過ぎても漁り続けた。そして案の定トラブルが起こり二人ほど“目を瞑って”貰った。けれど姿を見られたために騒ぎになり、汚れた服や後始末……色々としたことから街を離れた森の中に身を潜めている。
 本来ならば町の安宿で悠々自適と何食わぬ顔で過ごしていただろうことを思うとバカをした仲間への苛立ちがアズマは収まらない。
 
「そういえば子供いたよな。あいつらってどうしたんだ?」
「ああ、あの二人ですね。残った人たちが見てると思いますが……さあ?」

 ふと思い出して言ったアズマの言葉に青年は曖昧に返す。
 買い出しに……正確には買い出しと情報収集に行く前、荷物を持った子供が二人森の中を歩いていたのだ。少年と少女のその二人組は男達に合い、そしてその身を拘束された。アズマは実際にその場にはいなかったのだが、捕まえられたその二人の姿をちらりと見ている。

 家に返して誰かいたと騒がれても困る、そういった判断で焦った仲間が捕まえたのだが、子が帰らなければ街の方は余計に騒ぎになる可能性が高い。けれど捕まえた以上離すわけにいかずそのままにしてあるのだ。

「暗い中歩いていると悪い大人に見つかるって親から言われなかったのかね」
「オレら見た時探しもの見つけたように一瞬嬉しそうな顔しましたし、迷子じゃないですか? いい教訓になったと思いますよ」
「次があればいいがな」

 そんなことあるはずがない――暗にアズマはそう告げる。
 顔を見られ攫った相手をただ離すというのは危なくもある。捕まるリスクが高まる上に罪状が余分に付くだけ。消すか、仮に離すとしてもここを去ったあとでだ。

「どうするかあいつら。あのままってわけにもいかん」
「あんまり子供ヤるのは気分良くないですオレ。
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