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渦巻く滄海 紅き空 【上】
四十四 愚者か賢者か
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騒然とする本選会場。
先刻の試合で未だ興奮が冷めない観客達がざわめく中、テマリは自分に勝った男を睨みつけた。眉間に皺を寄せる。
「最初から計算尽だったのなら、もっと早く勝敗が決まっただろ」
暗になぜ自分を殺さなかったのか、と訊いてくる対戦相手の前で、シカマルは至極面倒そうに頭をガシガシと掻いた。

「戦場ならまだしも試験で相手殺したとあっちゃ、目覚めが悪いしな。というか、試合でマジになんなよ。メンドくせ〜」
「…やはり甘っちょろい奴だ」
呆れたように吐き捨てる。柔軟体操を始めたシカマルに、彼女は背を向けた。ふと足を止め、肩越しに振り返る。
「なら、覚えておきな。その甘え、今に消えるだろうよ」

それだけ告げると、もう此処には用は無いとばかりに踵を返す。屈折を繰り返していたシカマルがぴくりと動きを止めた。顔を上げ、テマリの背中を目で追い駆ける。
戦争を暗示するかのような物言いが気にかかった。


「シッカマル――!!」
突然背に軽い衝撃を受け、シカマルの黙考は打ち切られた。思い切り背中に圧し掛かっているナルを目の当たりにし、心臓が跳ね上がる。

「勝利おめでと、だってばよ!!」
「…そりゃ、ど〜も…」

ナルの絶賛に辛うじて返事を返す。落ち着かない動悸を手で押さえつつ、シカマルはナルから視線を逸らした。その様子に全く気づかず、シカマルにおぶさりながらナルは、既に対戦場から出ようとしているテマリにも声を掛ける。
「凄くカッコ良かったってばよ!テマリ姉ちゃん!!」

敗者にも拘らず賞讃の言葉を受けたテマリは目を大きく見開いた。一度「任せろ」と言った手前合わせる顔がないと思っていた彼女だが、ナルの感嘆を聞くと、後ろめたい気持ちが払拭された。思わず微笑む。


振り向かずに手だけをひらひらと振ったテマリ。彼女を見送っていたナルは、なぜかムスッと顔を顰めたシカマルに引っぺがされた。
自分に言って欲しかった言葉をあっさり対戦相手に送った当の本人。きょとんとするナルに苦笑してから、シカマルはこつんと彼女の頭を小突いた。
「それより次の試合、ゆっくり観戦しようぜ」
口角を吊り上げる。にやりと笑ったシカマルの言葉に、ナルは暫し目をパチパチと瞬かせた。次第に綻びる顔。
笑顔で「サスケ!!」とナルが叫ぶや否や、彼女の視界を鮮やかな緑が遮った。


刹那、深緑の台風が本選会場に上陸する。対戦場を舞い、渦巻く木の葉。息を呑む観客達に紛れ、会場の片隅で彼らは目配せした。
木の葉と共に風に乗って現れたのは――――。

「名は?」
次試合の主役。試験官の質疑に応じた彼は、以前より遙かに伸びた前髪を垂らして己の名を告げた。

「うちはサスケ」


試験にちょうど間に合った、うちはサスケ及び畑
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