暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
アゲインスト
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──────ッッッッ!!!」

もしこの世界にガラスがあったら、共振作用で弾け飛ぶほどの雄叫びをあげた。

後ろにいるリズが半ば本能的に耳を覆う、そんな人外の叫び声……。

威嚇(ハウル)》スキル。

おもにボスなどの大型モンスターの憎悪値(ヘイト)を稼ぎ、ターゲットを自分に向けさせるためのスキルだ。だがこの場合、レンは自分ひとりだけで甲虫の王を屠るために威嚇スキルを駆使したのではない。

あくまでリズに甲虫の王のターゲットが移る事態を阻止するため、ただそれだけのために彼は自分の命を危険にさらしたのだ。

黒き巨体の、小さき目が剣呑に光り輝き、その口元と思われる部分に再びの三色の光が収束していく。

「………!!だ、だめッ…………!!!」

リズが堪りかねたように悲鳴を上げる。その声は、驚くほどに普段の彼女の声と比べ、掠れていた。

咄嗟に目の前にいる少年を引き戻そうとするが、腰が抜けでもしたのか、忌々しき体はピクリとも動かない。

だが紅衣の少年は、あまつさえ不敵な笑顔を浮かべつつ、両手をゆっくりと掲げた。

そして、その手首が小刻みに動き出す。同時にワイヤーが音もなく回り始める。

同時に何も見えなかった空中に、グリーンの光が唐突に現れる。

──ソードスキル!

どうやらレンのそのワイヤースキルのソードスキルは、どうやら防御系のソードスキルだったようだ。ヒイィィィィー!というジャンボジェット機のエンジン音に似た音が発される。

すでにワイヤーの回転は極まっていて、まるで緑色の円盾(ラウンドシールド)のように見える。

ギュアアァァァぁー!!!

………もう風車が出す音ではなかった。

そこに向かって、溜めに溜め込んだ必殺三色ブレス攻撃を黒い甲虫が放ったのと、レンが頭上に創造した凶暴な盾を眼前にかざしたのは、ほぼ同時だった。

轟音、雷鳴、閃光。思わず顔を背ける。

しかし、レンが創り出したシールドに打ち当たったブレスの奔流は、吹き散らされるように拡散し、空中にポリゴンの残滓を残し消えていく。

リズは慌ててレンの体に視線を合わせ、HPバーを確認した。本当に呆れたことに、一ドットも減らずレンのHPは微動だにしていない。

その時、ブレス攻撃が途切れたのを見計らったようにレンが動いた。爆発じみた轟音を立てて、宙の甲虫へと飛び掛かる。

普通、飛行する敵に対してはポールアーム系や投擲系の、リーチの長い武器で攻撃して地面に引き摺り下ろし、それからショートレンジの戦闘に持ち込むのがセオリーだ。

だが、レンはその原則を軽々と無視し、五メートルほどの高さにホバリングしている《ブラックロード・パラサイト》の頭部の辺りにまで一気に飛翔すると、腕を煙るように閃かせる。


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