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故郷は青き星
第二十話
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 アルバン大統領の仲介もあり、エルシャンと主要各国首脳との会談はスムーズに事が進み、秘密裏ではあるが主要各国と連盟の間にパイプを構築する事に成功する。

 そして仲介役をつとめたアメリカは大きく株を上げる事となった。
 各国首脳はアメリカが連盟に対して技術提供などの要求の一切を棚上げして交渉に臨んだことに対して、今回の地球全体にとって重大な事態を利用し自国へ利益を誘導を行わない真摯で理性的な政治指導者とアルバン大統領を賞賛した……『何で我が国にこの話が来なかったんだろう。畜生!』という妬みと共に。

「感謝します。大統領閣下」
 この2ヶ月の間、強行スケジュールで世界中を飛び回り各国の首脳と対談を果たしたアルバン大統領にエルシャンは頭を下げる。
「こちらこそ。実りのある二月でした感謝します。公使閣下」
 楽しげにアルバン大統領は答える。
 結果、各国首脳は連盟との交渉においてアメリカの主導的立場を受け入れざるを得ず、アルバン大統領は自らの判断の結果に大いに満足していた。

「しかし、この同調装置とは見事なものですな」
 現在、エルシャンとアルバン大統領は同調装置を通してシミュレート世界に作られた空間にいた。
 大統領が各国首脳とエルシャンの対談を実現させる事が出来た秘密が同調装置だった。
 表向きの会談の後に、私的に親睦を深めるとして相手と2人きりになる機会を設け、会話の中で「最近私は我が国で開発された面白い道具にはまってましてね」と切り出して言葉巧みに相手に使わせる事に成功していた。その成功率は100%で彼の政治家としてのコミュニケーション能力の高さを示すものだったが、詐欺師としてもやっていけそうだとエルシャンは思っていた。
 一方でアルバン大統領も、このシミュレート世界に招かれてしまった各国首脳を見事に誑しこんだエルシャンの手腕を詐欺的だとも思っていたのだが……

「このように使用者の全感覚をサポートし、シミュレート世界を構築する程度の機械は科学技術が数十年健全な進歩を続けてられたなら、純粋に地球人だけの技術として作り出すことが出来たはずです。しかし同調装置の根幹にある技術は連盟に所属するどの国家をも上回る科学技術の結晶です」
「銀河系外技術と言ったかね?」
「ええ、この天の川銀河よりも遥か昔に生まれて、多くの文明種によって栄えた銀河。そして【敵性体】によって滅ぼされた銀河の遺言にして遺産です」
「一体どれだけの銀河がヤツ等によって滅ぼされてきたというのだ……」
「分かりません。一説によると【敵性体】を【種蒔く者】と同一視する研究者もいるとか」
「【種蒔く者】?」
 翻訳機が”Seeder”と訳した言葉にアルバン大統領が首をひねる。
「仮定としての存在……いえ、どちらかといえば伝説の類です」
「ほう、それ
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