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星河の覇皇
第二部第一章 策略その三
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「あのようなこととは?」
「サハラ侵攻ですよ。幾ら人口が増え過ぎたからといって他国を侵略し住民を追い出しそこに移住するとは。あれではまるで強盗です」
「ほんの一千年前までそれが常識でしたよ」
 八条はそれに対して素っ気なく言った。
「しかしですね」
「それにより百億単位の難民が生じている、と仰りたいのですね」
「それもありますが」
 八条は比較的冷静だがサルムーンは何処か感情的である。普段は冷静な彼にしては珍しかった。
「それは彼等の身になって考えないとわからないことですよ。彼等は我々のように広大な開拓地など持ってはいないのですから」
「開拓地、ですか」
「はい。我々がこうして曲がりなりにも今まで武力による衝突も分裂もなく緩やかな連合体でこれたのはひとえに三方に続く未開の星系のおかげです。それがあるからこそ産業も科学も発達し人口も増えたのです」
 そうであった。衝突があっても別の星系に進出すればよく開拓を進める為に科学技術が発達し人口も驚異的な増加を果たしたのだ。連合の特徴はこの開拓地なくして語れない。未開の星系はまだ何十万光年も続いていると言われている。彼等にとってそこはあらゆる問題の解決口であり発展の源であったのだ。
「彼等にはそれがありません。もとはといえば我々の祖先があの場所に追いやったのですが」
「あの時彼等は歯噛みして向かったそうですね」
「はい。しかし個々の惑星はかなり恵まれたものでそれは喜んだらしいですが」
「しかしそれは限られていた、と」
「残念なことに」
 言葉は皮肉めいたものにも聞こえるが口調は淡々としたものであった。
「彼等にとってはあの地への侵攻は生きる為に仕方がないのです。それを道義だ何だので責めることは出来ませんよ。我々も同じ立場ならそうしたでしょうし」
「そうですか」
「残念なことですが。人間の歴史とはそうした一面もあります」
 八条は無表情のまま言った。
「それに我々も将来彼等やサハラの勢力と衝突する可能性もありますよ」
「そうですね。若しハサンが滅びそこにエウロパや我々にとって脅威となる勢力が現われたりしたら」
「その時は戦わねばならないでしょう」
 予防戦だ。あらかじめ脅威となり得る敵を強大なものとなる前に叩いておこうというものだ。
「たださしあたってはサハラ諸国との衝突はないでしょうが」
 八条は表情を穏やかなものにした。
「彼等は互いに争い、またエウロパに対抗しなくてはなりません。今のところは」
「はい」
「エウロパですがやはりブラウベルグ回廊が気になりますね」
 連合とエウロパの唯一の国境である。ここは長い間激しい睨み合いが続いている。
「ガンタース要塞群の防御をさらに強化しておきますか」
「そうですね、さしあたってはそうしましょう」
「わかり
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